インフルエンサーにPRを依頼するときの注意点とは?ステマ規制・PR表記・契約の確認ポイント

インフルエンサーやモニターに商品を紹介してもらうとき、DMや口頭のやりとりだけで進めてしまうことがあります。しかし、PR表記、投稿内容、報酬、投稿後の写真や動画の利用範囲を曖昧にしたまま依頼すると、ステマ規制や契約トラブルにつながるおそれがあります。本記事では、PR依頼時に確認すべき注意点を整理します。
1. インフルエンサーへのPR依頼で注意すべきこと
インフルエンサーへのPR依頼は、商品を紹介してもらうだけの気軽なお願いに見えることがあります。しかし、事業者が商品やサービスの紹介を依頼する以上、広告・宣伝に関わる取り組みとして整理しておく必要があります。まずは、事業者が見落としやすいポイントを確認します。
1-1. PR投稿は広告・宣伝の一部として扱われる
インフルエンサーに商品やサービスを紹介してもらう投稿は、事業者の広告・宣伝の一部として見られることがあります。
たとえば、飲食店が来店投稿を依頼する、美容サロンが施術体験の投稿を依頼する、EC事業者が商品のレビュー投稿を依頼する、といった場面です。投稿者本人の言葉で発信されるため、通常の広告より自然に見える一方で、広告であることが分かりにくいと、閲覧者に誤解を与える可能性があります。
そのため、インフルエンサーへのPR依頼では、投稿内容だけでなく、広告であることの表示方法まで確認しておく必要があります。
1-2. 小規模事業者でもステマ規制の対象になり得る
ステルスマーケティング規制は、大企業だけに関係するものではありません。個人事業主、一人会社、小規模店舗であっても、インフルエンサーやモニターにPRを依頼する場合は注意が必要です。
2023年10月1日から、広告であるにもかかわらず広告であることが分からない表示は、景品表示法上の不当表示として規制されています。インフルエンサーの投稿であっても、事業者が投稿内容に関与している場合や、商品提供・報酬支払いなどの関係がある場合は、事業者の表示、つまり広告主側の表示として問題になることがあります。
「投稿するのは相手だから、自社には関係ない」と考えるのではなく、依頼する側でもPR表記や投稿条件を確認しておくことが大切です。
1-3. 契約書や発注書で条件を残しておく意味
インフルエンサーやモニターへの依頼は、DMやチャットだけで進むこともあります。しかし、やりとりが簡単な分、後から条件を確認しにくくなることがあります。
投稿する媒体、投稿回数、投稿日、報酬、商品提供の有無、PR表記、投稿後の素材利用などは、契約書や発注書、メールなど記録に残る形で確認しておきます。
契約書という形にしない場合でも、少なくとも「何を依頼し、相手が何を了承したのか」が分かる状態にしておくと、後からの認識のずれを防ぎやすくなります。
2. ステマ規制とPR表記で確認すべきポイント
PR依頼で特に注意したいのが、ステマ規制への対応です。自社の場合にPR表記が必要かどうかは、インフルエンサーとの関係によって変わります。まずは、次の流れで確認してみてください。

報酬を支払っていなくても、商品を提供して投稿を依頼した場合などは、PR表記が必要になることがあります。「お金を払っていないから広告ではない」とは限らない点に注意が必要です。
2-1. 広告であることが分かる表示を入れる
PR投稿では、一般の閲覧者が広告・宣伝であると分かる表示を入れる必要があります。
たとえば、「PR」「広告」「提供」「タイアップ」などの表示を、投稿内の見つけやすい位置に入れる方法があります。SNSによっては、投稿画面上で広告や提携関係が分かる表示を設定できる場合もあります。
ただし、表示そのものが入っていても、投稿の末尾に小さく書かれていたり、大量のハッシュタグの中に埋もれていたりすると、閲覧者がPR投稿だと気づきにくくなります。契約書や依頼文では、PR表記に使う文言だけでなく、表示する位置や方法も確認しておくとよいでしょう。
2-2. 無償提供でも問題になる場合がある
報酬を支払っていない場合でも、ステマ規制と無関係とはいえません。商品やサービスを無償で提供し、感想投稿を依頼する場合には、提供の目的や依頼内容、過去の取引関係、将来の取引可能性などによって、事業者の表示と判断されることがあります。
たとえば、特定のインフルエンサーを選んで商品を提供し、「使用後の感想を投稿してください」と依頼する場合です。この場合、投稿内容が完全に自主的なものといえるのか、事業者の依頼に基づく表示なのかが問題になります。
「報酬を払っていないから広告ではない」と考えるのではなく、商品提供の経緯や投稿依頼の内容をふまえて、PR表記が必要かどうかを確認しておきます。
2-3. 投稿内容をどこまで確認するか決めておく
PR投稿では、投稿前に内容を確認したい場面があります。商品名、価格、キャンペーン期間、使用上の注意、効果に関する表現などは、事業者側で確認しておきたい情報です。
ただし、投稿文の言い回し、写真の構図、ハッシュタグ、評価の内容まで細かく指定する場合は、投稿者本人の自然な感想というより、事業者が用意した広告に近いものとして見られやすくなります。そのため、投稿内容を確認する場合でも、広告であることが分かる表示を入れたうえで、「事業者が確認する部分」と「投稿者本人の表現に任せる部分」を分けておくことが大切です。
たとえば、商品名や価格、キャンペーン条件、使用上の注意などの事実関係は事業者側で確認し、感想の言い回しや写真の雰囲気は投稿者に任せる、といった形が考えられます。どこまで確認するのかを依頼時に決めておくと、誤った表示や分かりにくいPR表記を防ぎやすくなり、投稿者との認識のずれも起こりにくくなります。
3. PR依頼時に契約で確認すべき基本項目
ステマ規制への対応だけでなく、PR依頼そのものの条件も整理しておく必要があります。ここでは、契約書や発注書で確認したい基本項目を見ていきます。
3-1. 投稿媒体・投稿回数・投稿日
まず確認したいのは、どの媒体で、何回、いつ投稿するのかです。
Instagramのフィード投稿なのか、ストーリーズなのか、TikTok動画なのか、YouTube動画なのか、Xの投稿なのかによって、制作内容や表示形式は変わります。投稿予定日、投稿時間、投稿後にどのくらい掲載しておくかも確認しておきます。
「SNSで紹介する」とだけ書くと、どのアカウントで、どの形式で、何回投稿するのかが曖昧になります。媒体ごとの条件を具体的にしておくと、依頼後の確認がしやすくなります。
3-2. 報酬・商品提供・交通費の扱い
報酬の金額、支払時期、支払方法も確認します。商品提供だけなのか、投稿報酬を支払うのか、来店や撮影にかかる交通費を負担するのかも整理しておきます。
また、投稿前にキャンセルとなった場合、投稿後に削除が必要になった場合、修正対応が発生した場合に、報酬をどう扱うかも問題になりやすい点です。
「商品を渡したから投稿してもらえると思っていた」「成果が出てから支払うと思っていた」といった認識のずれを避けるためにも、報酬条件は事前に明確にしておきます。
3-3. 投稿内容の確認・修正ルール
投稿前に内容を確認するかどうか、修正を求められる範囲、修正回数、確認期限も決めておきます。
事業者としては、誤った情報や過度な表現を避けたい一方で、インフルエンサー側としては、自分の言葉や投稿の雰囲気を守りたい場合があります。そのため、事前確認をする場合でも、どこまで修正できるのかをあらかじめ整理しておきます。
商品の特徴、価格、キャンペーン条件、使用上の注意など、事実関係に関わる部分は、事業者側で確認する体制を整えておくと、投稿後の修正や削除を減らしやすくなります。
3-4. 契約で押さえるべき項目をさらに確認したい場合
インフルエンサーとの契約では、投稿条件だけでなく、競合他社の商品を同時期に紹介しない取り決め、秘密保持、契約解除、損害賠償などが問題になることもあります。
インフルエンサー契約書の作成ポイントを詳しく確認したい場合は、「インフルエンサー契約書作成ポイントは?企業と双方の利益を守る」も参考になります。
4. 投稿後の二次利用・権利関係で確認すべきこと
PR投稿は、投稿して終わりではありません。投稿された写真、動画、文章、コメントを、事業者が後からどのように使えるのかも確認しておきます。
4-1. 投稿写真や動画を広告に使えるか
インフルエンサーが撮影した写真や動画を、自社サイト、広告バナー、LP、チラシ、店頭POPなどに使いたい場合があります。
しかし、PR投稿として掲載された写真や動画を、事業者が自由に二次利用できるとは限りません。投稿者が撮影した写真や動画には著作権が発生する可能性があり、本人の肖像や氏名の利用についても確認が必要です。
契約書では、投稿素材を事業者が再利用できるのか、使える媒体、期間、地域、加工の可否、追加料金の有無を確認しておきます。
4-2. 投稿文・写真・動画の著作権を確認する
インフルエンサーが作成した投稿文、写真、動画、サムネイル、ナレーションなどは、制作物として著作権の問題が生じることがあります。
事業者が投稿内容を自社サイトに転載したり、広告クリエイティブとして使ったり、別媒体に流用したりする場合は、著作権の帰属(誰のものになるか)や利用許諾の範囲を契約書で確認します。
投稿物の著作権や利用許諾の考え方については、「著作権譲渡とは?利用許諾との違い・契約書で確認すべき権利の範囲」や「制作物の著作権は誰のもの?外注・業務委託契約で確認すべきポイント」とあわせて確認すると、権利関係を整理しやすくなります。
4-3. 肖像・氏名・アカウント名の使用範囲を決める
インフルエンサーの顔写真、氏名、活動名、アカウント名、アイコン画像などを広告に使う場合は、どこまで使用できるのかを確認します。
特に、投稿画面のスクリーンショットを広告に使う場合や、「○○さんも紹介」といった形で名前を出す場合は、本人の承諾範囲が問題になりやすくなります。
契約書では、肖像、氏名、アカウント名、投稿画面、コメントなどを、どの媒体で、どの期間、どの目的で使えるのかを具体的に整理しておきます。人物写真や顔出し画像を広告・SNS・採用ページなどで使う場合の考え方は、「肖像権使用同意書が必要な場面とは?SNS・広告・従業員写真の注意点」でも整理しています。
5. PR依頼で見落としやすい確認ポイント
インフルエンサーにPRを依頼するときは、「投稿してもらうこと」だけでなく、投稿後にその内容をどう扱うかまで考えておく必要があります。特に、PR表記、投稿内容の確認範囲、写真や動画の再利用は、依頼時に決めていないと後から調整が必要になりやすい部分です。
5-1. PR投稿を自社サイトや広告に使う場合
インフルエンサー本人の投稿にはPR表記が入っていても、その投稿を事業者側が自社サイトや広告に使うときに、PR表記が見えにくくなることがあります。
たとえば、投稿画面の一部を切り取ってLPや広告バナーに使う場合、元の投稿にあった「PR」の表示が見えなくなることがあります。また、投稿文の一部だけを抜き出して掲載すると、広告・宣伝として依頼した投稿であることが伝わりにくくなる場合もあります。
PR投稿を自社サイト、広告、チラシ、店頭POPなどに使う予定がある場合は、元の投稿だけでなく、事業者側で再利用するときにもPR表記をどう入れるのかを確認しておくと安心です。
5-2. 事実確認と表現の指定が混ざってしまう場合
PR投稿では、商品名、価格、キャンペーン期間、使用上の注意など、事実関係に関わる部分は事業者側で確認しておく必要があります。
ただし、「この感想を入れてほしい」「高評価に見える内容にしてほしい」といった形で、感想や評価の内容まで細かく指定すると、投稿者本人の自然な感想というより、事業者が内容を決めた広告として見られやすくなります。
そのため、商品情報やキャンペーン条件などの事実関係は事業者側で確認しつつ、感想の言い回しや写真の雰囲気は投稿者本人に任せるなど、確認する部分と任せる部分を分けておくことが大切です。
5-3. 写真・動画・投稿文を後から使いたくなる場合
PR投稿のあとで、事業者が写真、動画、投稿文、コメント、アカウント名などを自社の広告素材として使いたくなることがあります。
ただし、投稿してもらうことと、その投稿内容を事業者が自由に使えることは別です。契約で二次利用の範囲を決めていないと、自社サイトや広告に使う段階で、追加料金や使用できる媒体について改めて相談が必要になることがあります。
PR投稿の写真や動画を自社サイト、広告、チラシ、店頭POPなどに使う可能性がある場合は、投稿前の段階で、どの媒体で使えるのか、いつまで使えるのか、追加料金が発生するのかを確認しておきましょう。
6. 想定事例
ここでは、PR依頼時に条件を十分に整理していなかったことで、投稿後に対応が必要になった想定ケースを紹介します。
A社の事例:商品提供後の投稿でPR表記が不明確だったケース
A社は、スキンケア用品の新商品を広めるため、Instagramでフォロワーの多いインフルエンサーに商品を無償提供し、使用感の投稿を依頼しました。
依頼時のやりとりはDMのみで、「よければ感想を投稿してください」と伝えただけでした。PR表記の入れ方や、投稿前に内容を確認するかどうかまでは決めていませんでした。
投稿には商品写真と好意的な感想が掲載されました。しかし、「PR」の表示は投稿文の末尾に小さく入っているだけで、広告・宣伝として依頼した投稿であることが分かりにくい状態でした。その後、A社がその投稿を自社サイトや広告にも使おうとした際、PR表記や投稿内容の確認ルールを決めていなかったことに気づき、投稿者に表示方法や再利用の可否を改めて確認する必要が生じました。
このケースでは、商品提供と投稿依頼の関係をふまえ、PR表記の文言や表示位置、投稿前確認の有無、投稿後に写真や投稿文を使える範囲を、依頼文や契約書で整理しておく必要がありました。PR依頼では、報酬の有無だけでなく、広告であることをどう表示するか、投稿後にどこまで使えるかまで確認しておくことがポイントです。
7. まとめ
最後に、本記事の要点を整理します。
- インフルエンサーやモニターへのPR依頼では、投稿媒体、投稿内容、投稿日、公開期間、報酬、商品提供の条件を具体的に確認する
- 2023年10月1日から運用されているステマ規制を踏まえ、報酬の有無だけでなく、商品提供、依頼内容、取引関係も含めてPR表記の方法を整理する
- 投稿後の写真・動画・投稿文を事業者が再利用する場合は、著作権、肖像、氏名、アカウント名の使用範囲を契約書で確認する
インフルエンサーへのPR依頼は、気軽に始められる一方で、広告表示、権利関係、投稿後の利用範囲で認識のずれが起きやすい分野です。DMや口頭のやりとりだけで進めず、契約書や発注書など記録に残る形で条件を整理しておきましょう。
*記事内の事例(ケース)については、フラット経営事務所・行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。
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