著作権譲渡とは?利用許諾との違い・契約書で確認すべき権利の範囲

お店のロゴやチラシのデザインを外部に依頼し、対価も支払った。ところが、後から新しい看板やSNS広告、グッズにも使おうとしたときに、「ここまで使っても大丈夫かな」と迷うことがあります。
こうした疑問は、著作権の譲渡と利用許諾(使う許可)の違いを、契約書で確認できていないと起こりやすくなります。制作物をどこまで使えるのかは、「お金を払ったかどうか」だけで決まるものではありません。本記事では、著作権譲渡と利用許諾の違い、契約書で確認しておきたい権利の範囲について解説します。
1. 著作権の「譲渡」と「利用許諾」は何が違うのか
制作物をどこまで使えるのかを考えるときは、まず「著作権を譲り受けたのか」「使う許可を受けただけなのか」を分けて考える必要があります。ここでは、著作権の譲渡と利用許諾が、それぞれどのような意味を持つのかを確認します。
1-1. 譲渡は、著作権そのものが相手に移る
著作権の譲渡とは、著作権という権利そのものを相手に移すことです。譲り受けた側は、契約で制限がない限り、その制作物を自社で使ったり、取引先や制作会社に利用させたりしやすくなります。
たとえば、ロゴの著作権を譲り受けていれば、自社の判断で名刺・看板・グッズなどに幅広く使いやすくなります。利用のたびに制作者へ確認するのではなく、権利そのものを取得するイメージです。ただし、著作者人格権は譲渡の対象にならないため、改変や氏名表示などの扱いは別に確認しておく必要があります。
なお、イラストの著作権譲渡契約書について詳しく確認したい場合は、「イラストの著作権譲渡契約書とは?作成方法と注意点」もあわせてご覧ください。
1-2. 利用許諾は、権利は元のまま「使う許可」だけを得る
利用許諾とは、著作権は制作者に残したまま、決められた範囲で使う許可を受けることです。発注側が取得するのは著作権そのものではなく、契約で決めた範囲内で利用できる立場です。
たとえば、「自社サイトでの掲載に限る」という条件で許可を受けている場合、同じ画像を広告やグッズに使えるとは限りません。別の用途でも使いたい場合は、あらためて許可を取ったり、追加の対価が必要になったりすることがあります。利用許諾は、権利を買い取るというより、決められた範囲で使わせてもらう形に近いといえます。
1-3. どちらかで「できること」が変わる
同じように対価を支払って制作物を作ってもらった場合でも、譲渡なのか利用許諾なのかによって、その後にできることは変わります。譲渡であれば自社の判断で使える範囲が広くなりやすい一方、利用許諾であれば契約で決めた範囲に利用が限られます。
そのため、「お金を払って作ってもらったから自由に使える」と考えるのではなく、契約書の中で著作権が移っているのか、どの範囲で使える許可を受けているのかを確認することが出発点になります。
譲渡と利用許諾では、同じ制作物でも、その後にできることが変わります。違いを図で見ると、次のようになります。
譲渡と利用許諾の違いを図で見ると、次のようになります。

このように、制作物をどこまで使えるかは、対価を支払ったかどうかではなく、譲渡なのか利用許諾なのかによって変わります。次に、契約書ではどの点を確認すべきかを見ていきましょう。
2. 契約書で確認すべき権利の範囲
譲渡と利用許諾のどちらを選ぶ場合でも、契約書では「何を」「どこまで」「どの条件で」使えるのかを確認する必要があります。ここでは、譲渡の場合と利用許諾の場合に分けて、契約書で見ておきたい項目を整理します。
2-1. 譲渡のときに確認する項目
著作権を譲渡してもらう場合は、譲渡の対象・対価・譲渡の時期を契約書で明確にしておきます。とくに見落とされやすいのが、譲渡する権利の範囲です。
たとえば、納品されたイラストを別のデザインに加工したり、ロゴを展開して別の商品デザインに使ったりする場合は、二次利用や改変に関わる権利が問題になります。著作権には複製権や翻案権などさまざまな権利が含まれるため、「著作権を譲渡する」と書くだけで十分かどうかを確認する必要があります。
ここで注意したいのが、著作権法27条・28条の権利です。契約書に「すべての著作権を譲渡する」とだけ書いた場合でも、著作権法27条・28条の権利は、譲渡した側に残るものとして扱われる可能性があります。
そのため、これらの権利まで含めて譲り受けたい場合は、「著作権法27条及び28条の権利を含む」といった形で、契約書に具体的に記載しておきます。後から加工・展開・二次利用を予定している制作物ほど、この記載があるかを確認しておくと安心です。
2-2. 利用許諾のときに確認する項目
利用許諾を受ける場合は、使ってよい範囲を具体的に確認します。確認したいのは、利用できる媒体(Web・印刷・広告など)、期間、地域、そして独占か非独占かという点です。独占的な許諾であれば、契約上、自社だけが使える形にできます。これに対して、非独占の許諾であれば、制作者が同じ制作物を他社にも使わせる可能性があります。
なお、正式に利用許諾を受けていれば、その後に著作権が第三者へ移っても、急に使えなくなるわけではありません。許諾された利用方法・条件の範囲内であれば、利用を続けられるとされています。ただし、そもそも使える範囲は契約内容によって変わります。そのため、「どこまで・いつまで・自社だけか」を契約書で確かめておくと、後の認識のずれを防げます。
利用できる範囲や条件を細かく決めておきたい場合は、ライセンス契約書で取り決める方法もあります。詳しくは「ライセンス契約書の作成ポイント徹底解説!ビジネス成功の鍵とは?」で解説しています。
2-3. 見落としやすい論点
譲渡・利用許諾のどちらでも、次の論点は見落とされやすいため、契約書で確認しておきたいところです。
- 二次利用:納品物を別の媒体や商品へ展開してよいか
- 改変:色やレイアウトを変えてよいか
- クレジット表記:制作者名の表示が必要か
- 再許諾:自社からさらに第三者へ使わせてよいか
とくに注意したいのが著作者人格権です。著作者人格権は、公表のしかたや氏名の表示、内容を勝手に変えられないことなどを守る、著作者本人の人格的利益に関わる権利です。この権利は著作者本人に専属するため、著作権を譲り受けても当然に移るものではありません。
そのため、「著作権を譲ってもらったから自由に改変できる」と考えていると、トリミングや色変更、レイアウト変更の場面で行き違いが生じることがあります。実務では、契約書に著作者人格権を行使しない旨の取り決め(不行使特約)を入れて対応することがあります。
ただし、不行使特約を入れていても、どのような改変でも問題なくできるとは限りません。どこまで変更する可能性があるのか、どの媒体で使う予定があるのかを、契約時に共有しておくとよいでしょう。
3. 譲渡と利用許諾を取り違えると起きること
譲渡なのか利用許諾なのかを確認しないまま進めると、納品後に「使えると思っていた範囲」と「契約上認められている範囲」がずれることがあります。ここでは、実務で起こりやすい三つの場面を見ていきます。
3-1. 「買い取ったつもり」で別媒体に使えない
よくあるのが、買い取ったつもりでいたものの、実際には利用許諾だったというケースです。たとえば、自社サイト用に依頼したバナーやイラストを、後からSNS広告、パンフレット、店頭POPなどに使おうとして、契約上は認められていなかったと気づくことがあります。
この場合、追加の許可や追加費用が必要になり、予定していた広告や販促物の準備が遅れることもあります。使い始める前に、譲渡なのか利用許諾なのか、利用許諾であればどの媒体まで使えるのかを確認しておくと、こうした手戻りを防ぎやすくなります。
3-2. 改変やトリミングで揉める
制作物に手を加える場面でも、認識のずれが起きやすくなります。レイアウトの一部を変えたり、用途に合わせて画像をトリミングしたり、色味を調整したりすることが、著作者人格権(同一性保持権)との関係で問題になることがあるためです。
発注側としては「広告用に少し調整しただけ」と考えていても、制作者側から見ると「作品の印象が変わっている」と受け止められる場合があります。改変の可能性がある制作物では、どこまで手を加えてよいのかを契約書で取り決めておくと安心です。
3-3. 制作実績として公開できるかで認識がずれる
制作者が制作実績として作品を公開してよいかも、納品後に問題になりやすい点です。発注側は社外に出したくないと考える一方で、制作者側はポートフォリオやSNSに掲載したいと考えることがあります。
とくに、公開前の商品、店舗リニューアル、採用ページ、広告用デザインなどは、公開のタイミングや範囲を決めておかないと行き違いが起こりやすくなります。実績公開の可否は、譲渡・利用許諾とは別に、社名を出してよいのか、画像だけならよいのか、いつから公開できるのかまで契約書で明確にしておくとよいでしょう。
4. 譲渡と利用許諾はどちらを選ぶべきか
著作権を譲り受けるべきか、必要な範囲で利用許諾を受ければよいかは、制作物の使い方によって変わります。ここでは、契約前に整理しておきたい判断の目安を確認します。
4-1. 自社で長く自由に使いたい場合は譲渡を検討する
ロゴやブランドの中心になる制作物など、長期にわたり自社の判断で幅広く使いたいものは、著作権の譲渡を検討する場面です。媒体や用途が後から広がっても、その都度、制作者に許可を取らずに使いやすくなるためです。
たとえば、名刺、看板、Webサイト、広告、グッズなど、今後さまざまな場面で使う可能性がある制作物は、最初から譲渡を前提に契約内容を確認しておくと安心です。中核的に使い続ける制作物ほど、譲渡を選ぶ意味が大きくなります。
4-2. 特定の媒体・期間だけ使うなら利用許諾を検討する
使う媒体や期間が限られている場合は、利用許諾で対応できることがあります。一定期間のキャンペーン画像や、特定のWebページだけで使う素材であれば、必要な範囲の許可を受ける形の方が、条件を調整しやすい場合があるためです。
ただし、利用許諾を選ぶ場合は、使える媒体・期間・地域・用途を契約書で具体的に決めておく必要があります。使い方が限定的な制作物ほど、利用許諾が現実的な選択肢になります。
4-3. 迷う場合は将来の使い方まで想定して契約書に書く
判断に迷う場合は、現在の用途だけでなく、将来の使い方まで想定して契約書に落とし込みます。今はWebサイトだけで使う予定でも、後から広告、チラシ、グッズ、店舗備品などに展開する可能性があるなら、その範囲も含めて取り決めておくと安心です。
「今使う場所」だけで契約内容を決めると、事業が広がったときに追加交渉が必要になることがあります。この先どのように使う可能性があるのかを発注前に整理しておくことが、トラブル防止につながります。
5. 想定事例
ここでは、譲渡と利用許諾の違いを十分に確認しないまま進めた場合に、どのような行き違いが起こり得るかを見ていきます。
A社の事例: ロゴを買い取ったつもりでグッズ化しようとしたケース
あるベーカリーの店主が、開業時に店のロゴデザインをデザイナーへ依頼し、対価を支払って納品を受けました。当初は、看板やショップカード、チラシに使うことを想定しており、店主も「お金を払って作ってもらったロゴだから、今後も自由に使える」と考えていました。
その後、ロゴ入りのトートバッグや紙袋を作ろうとしたところ、デザイナーから「グッズへの利用は当初の合意に含まれていないため、別途料金が必要です」と説明されました。契約書を確認すると、合意していたのは「店舗の宣伝目的での利用許諾」であり、商品やグッズへの展開までは明記されていませんでした。
このケースで確認すべきだったのは、ロゴの著作権を譲り受けるのか、一定の範囲で使う許可を受けるだけなのかという点です。ロゴのように後から使い道が広がりやすい制作物ほど、依頼の段階で権利の範囲を確認しておくことが大切です。
6. まとめ
著作権譲渡と利用許諾の違いを確認するときは、「権利そのものが移るのか」「決められた範囲で使う許可なのか」を分けて考えることが出発点になります。契約書を見るときは、現在の使い方だけでなく、将来の広告展開やグッズ化なども含めて確認しましょう。
- 譲渡は著作権そのものが移り、利用許諾は決められた範囲で使う許可を得るもの
- 契約書では、譲渡なら譲渡対象と権利の範囲、利用許諾なら媒体・期間・地域・独占の有無を確認する
- 著作者人格権は譲渡しても残るため、改変の可否や将来の使い方は別に取り決めておく
まずは、手元の契約書や発注時のやりとりが「譲渡」なのか「利用許諾」なのか、どの範囲まで使えるのかを一度確認してみてください。
*記事内の事例(ケース)については、フラット経営事務所・行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。
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