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肖像権使用同意書が必要な場面とは?SNS・広告・従業員写真の注意点

2026 7/14
法務
2026年7月14日

 お客様や従業員、イベント参加者の写真を、SNSやホームページ、広告、採用ページなどに使うことがあります。撮影時に「載せても大丈夫です」と言われていたとしても、後から「広告に使われるとは思っていなかった」「退職後も掲載されるとは聞いていなかった」と言われ、トラブルにつながることがあります。 

 人物写真を事業で使うときは、撮影の了承だけでなく、使用目的や掲載媒体、掲載期間まで確認しておく必要があります。本記事では、肖像権使用同意書が必要になりやすい場面と、SNS・広告・従業員写真で確認しておきたい注意点を整理します。 

目次

1. 肖像権使用同意書とは何か

 人物写真や動画を事業活動で使うときは、「撮影してよいか」だけでなく、「撮影したものをどこで使ってよいか」が問題になります。まずは、肖像権使用同意書の役割を確認します。

1-1. 肖像権とは、顔や姿を無断で使われない利益のこと

 肖像権とは、本人の顔や姿を、無断で撮影されたり、公表されたり、利用されたりしないための利益を指す言葉です。「肖像権法」という名前の法律があるわけではありませんが、本人の人格に関わる利益として、判例上も保護されるものと考えられています。

 事業者が注意したいのは、「写真を撮ってよいか」だけではありません。撮影した写真をSNS、広告、ホームページ、チラシ、採用ページなどで使う場合に、本人がその使い方まで了承していたのかが問題になります。

1-2. 肖像権使用同意書は、写真や動画の使い方を確認する書類

 肖像権使用同意書とは、写真や動画に写っている本人から、一定の範囲で使用することについて同意を得るための書類です。

 たとえば、店舗で撮影したお客様の写真をSNSに載せる、従業員の写真を採用ページに掲載する、イベントの様子をチラシや広告に使うといった場合に、使用目的や掲載媒体を明確にしておきます。

 口頭で「載せてもいいですよ」と言われていたとしても、後から「広告に使うとは聞いていない」「退職後まで掲載されるとは思っていなかった」と認識がずれることがあります。書面やメール、フォームなど記録に残る形で確認しておくと、事業者側も本人側も、同意の範囲を確認しやすくなります。

1-3. 顔写真は個人情報の問題にもつながる

 本人を識別できる顔写真や動画は、個人情報に該当する場合があります。氏名を載せていなくても、顔がはっきり写っていて本人を特定できる場合には、個人情報の取扱いとしても注意が必要です。

 特に、会社のホームページ、採用ページ、SNS、広告など、不特定多数の人が見る場所に掲載する場合は、「社内で撮影した写真だから問題ない」とは限りません。利用目的や公開範囲を整理し、本人がどのような使われ方を想定しているかを確認しておくことが、後からの削除依頼やトラブルを防ぐことにつながります。

2. 口頭の了承だけでは曖昧になりやすい理由

 人物写真のトラブルでは、「了承を取っていなかった」だけでなく、「了承はあったが、範囲がずれていた」というケースもあります。ここでは、口頭確認だけで進めた場合に起こりやすい問題を整理します。

2-1. 撮影の了承と広告利用の了承は別に考える

 本人が撮影に応じたとしても、その写真を広告やチラシ、採用ページに使うことまで了承しているとは限りません。イベント会場で写真を撮ることには同意していても、その写真が後日、広告バナーやパンフレットに使われるとは思っていない場合があります。特に、商品やサービスの宣伝に人物写真を使うと、本人がその商品を推薦しているように見えることもあります。

 そのため、撮影時には、単に「写真を撮ってよいか」ではなく、「どの媒体で、どの目的に使うのか」まで説明しておく必要があります。撮影に応じてもらえたとしても、広告やSNSへの掲載まで了承を得ているとは限らない点を押さえておきましょう。

 撮影に応じてもらえたとしても、広告やSNSへの掲載まで了承を得ているとは限らない、という点を押さえておく必要があります。 

2-2. SNS投稿と広告・印刷物では受け止め方が変わる

 SNSへの投稿を了承してもらっていても、それだけで広告やチラシ、パンフレットにまで使えるとは限りません。本人としては「お店のSNSに少し載るだけ」と思っていたのに、後から商品やサービスの宣伝に使われると、「聞いていた話と違う」と言われ、削除依頼や使用停止を求められる原因になります。 

 同意書では、「公式SNS」「自社サイト」「チラシ」「広告」「採用ページ」など、使用予定の媒体をできるだけ具体的に書いておくと、後から説明しやすくなります。

2-3. 退職後や取引終了後に削除を求められることがある

 従業員、顧客、取引先、モデル、イベント参加者などとの関係は、時間が経つと変わることがあります。掲載したときは問題がなくても、退職、取引終了、転職、家族事情などをきっかけに、「写真を削除してほしい」と言われることがあります。

 掲載期間や削除依頼への対応を決めていないと、会社としてどこまで応じるべきか判断に迷いやすくなります。同意書では、使用期間、削除依頼があった場合の対応、退職後の取扱いなども整理しておくと、実務上の対応がしやすくなります。

3. 肖像権使用同意書が必要になりやすい場面

 肖像権使用同意書は、すべての写真について必ず作るものではありません。ただし、事業活動の中で人物写真を外部に公開する場合は、同意の範囲を確認しておいた方がよい場面が多くあります。

3-1. SNSにお客様や参加者の写真を投稿する場合

 店舗やイベントでは、お客様や参加者が写った写真をSNSに投稿することがあります。店舗の来店写真、セミナーやイベントの集合写真などです。

 本人が撮影に応じていたとしても、SNSへの投稿まで了承しているとは限りません。さらに、SNSは拡散されやすく、削除しても第三者が保存・共有している場合があります。

 顔がはっきり写る写真を投稿する場合は、掲載目的や掲載先を事前に伝え、可能であれば記録に残る形で同意を得ておくと安心です。

3-2. 広告・チラシ・パンフレットに人物写真を使う場合

 広告やチラシ、パンフレットに人物写真を使う場合は、SNS投稿よりも慎重に確認しておきたい場面です。広告利用は、商品やサービスの宣伝に本人の写真を使うことになるため、本人がどこまで了承しているかが問題になりやすいからです。

 たとえば、店舗のチラシ、スクールのパンフレット、美容サロンの施術例などで顔写真を使う場面が考えられます。

 このような場合は、「撮影に同意した」だけではなく、「広告・宣伝に使うことにも同意した」と確認できる形にしておく必要があります。使用媒体、掲載期間、地域、加工の有無などもあわせて整理します。

3-3. 従業員の写真をホームページや採用ページに掲載する場合

 会社のホームページや採用ページでは、従業員の写真を掲載することがあります。職場の雰囲気を伝えるために、集合写真、仕事中の写真、インタビュー写真などを使うケースです。

 従業員だからといって、会社が自由に写真を使えるわけではありません。特に、退職後も写真が掲載されたままになると、本人から削除を求められることがあります。

 従業員写真を使う場合は、掲載媒体、掲載期間、退職時の取扱い、削除依頼があった場合の対応を整理しておくと、後からの行き違いを防ぎやすくなります。

3-4. 未成年の写真を使う場合

 子どもや学生など未成年者の写真を使う場合は、本人だけでなく、保護者・親権者などの同意も確認しておくとよいでしょう。

 たとえば、学習塾、習い事教室、スポーツ教室、イベント、地域活動などで、子どもの写真をSNSやチラシに掲載する場面があります。未成年者の場合、本人がその場で了承していたとしても、保護者が公開を望まないことがあります。

 未成年者が写る写真や動画を外部に公開する場合は、保護者向けの同意書を用意し、掲載媒体や利用目的を具体的に説明しておくとよいでしょう。

4. パブリシティ権にも注意が必要な場面

 人物写真を事業で使う場合、肖像権だけでなく、パブリシティ権が問題になることもあります。特に、著名人やインフルエンサーなど、名前や顔に集客力がある人物を広告に使う場合は注意しておきたいところです。

4-1. パブリシティ権とは、氏名や肖像が持つ経済的価値を守る権利

 パブリシティ権とは、人の氏名や顔、姿などが持つ集客力を、無断で広告や宣伝に使われないための権利です。芸能人やスポーツ選手、インフルエンサーなど、名前や顔に人を引きつける力がある人物を広告に使う場合に問題になりやすい考え方です。

 一般の従業員やお客様の写真で、常にパブリシティ権が問題になるわけではありません。ただし、地域で知られている人、フォロワーの多い発信者、専門分野で影響力のある人を広告に使う場合は、肖像権だけでなく、宣伝目的でどこまで使ってよいのかも確認しておく必要があります。

4-2. インフルエンサーやモデル写真を使う場合は契約内容を確認する

 インフルエンサーやモデルに写真出演やPR投稿を依頼する場合は、撮影の可否だけでなく、写真や動画をどの媒体で、どの期間、どの地域で使えるのかを契約書で確認します。SNS投稿だけの予定だった写真を、後から広告バナー、LP、チラシ、店頭POPに使う場合、当初の合意範囲を超える可能性があります。

 本人の知名度や影響力を広告効果として利用する場面では、肖像の使用料や追加利用料が問題になることもあります。投稿内容、報酬、広告であることの表示、投稿後の二次利用の可否なども含め、PR依頼全体の条件を整理しておくと、後からの認識のずれを防ぎやすくなります。

5. 肖像権使用同意書で確認すべき項目

 肖像権使用同意書では、「写真を使ってよいか」だけでなく、どの範囲で使えるのかを明確にすることがポイントです。ここでは、実務で特に確認しておきたい項目を整理します。

5-1. 使用する写真・動画の範囲

 まず、どの写真や動画を使うのかを確認します。特定の撮影日に撮った写真なのか、イベント全体の写真なのか、今後撮影する写真も含むのかによって、同意の範囲は変わります。「2026年○月○日に開催されたイベントで撮影した写真・動画」など、対象を特定できる形にしておくと安心です。

5-2. 使用目的と掲載媒体

 次に、何のために、どこで使うのかを確認します。使用目的は広報、採用活動、広告宣伝、イベント報告など、掲載媒体は公式サイト、SNS、チラシ、パンフレット、広告などが考えられます。「広報に使う」とだけ書くと範囲が曖昧になりやすいため、SNSなのか、広告にも使うのか、印刷物にも使うのかを具体的に書いておきます。

5-3. 使用期間と削除・停止の扱い

 写真や動画をいつまで使えるのかも確認しておきます。特に従業員写真やお客様の声、イベント写真などは、時間が経ってから本人の状況が変わることがあります。掲載期間を決める、削除依頼があった場合の対応を定めるなど、運用時に迷わない形にしておくと安心です。

5-4. 加工・トリミング・編集の可否

 写真や動画は、掲載時にサイズ調整、トリミング、明るさ補正、テロップ追加などを行うことがあります。撮影された写真そのものには同意していても、顔が大きく切り取られたり、文脈が変わる形で編集されたりすることには抵抗を持たれる場合があります。必要な範囲で加工・編集を行う可能性があること、本人の印象を不当に損なう使い方はしないことを確認しておくとよいでしょう。

5-5. 対価・撤回・削除依頼への対応

 モデルやインフルエンサーに依頼する場合は、写真使用の対価も確認します。無償での協力なのか、有償での撮影・掲載なのかによって、後からの認識が変わることがあるためです。あわせて、本人から同意を撤回したい、削除してほしいと申し出があった場合に、今後の利用を停止するのか、すでに配布済みの印刷物まで対応するのかも整理しておくと、実務上の判断がしやすくなります。

5-6. 撮影者の著作権も確認する

 人物写真を使う場合は、写っている本人の同意だけでなく、撮影者の著作権にも注意が必要です。外部カメラマンや制作会社に撮影を依頼した写真は、被写体本人から掲載の同意を得ていても、写真そのものを自由に使えるとは限りません。SNS、広告、パンフレット、採用ページなどで継続的に使う場合は、撮影者との契約で、使用媒体・期間・範囲を確認しておきます。

 撮影者との契約については、 「著作権譲渡とは?利用許諾との違い・契約書で確認すべき権利の範囲」や「制作物の著作権は誰のもの?外注・業務委託契約で確認すべきポイント」とあわせて整理すると理解しやすくなります。

6. 肖像権使用同意書がないと起きやすいトラブル

 同意の範囲が曖昧なまま写真や動画を使うと、後から実務上のトラブルが起きることがあります。ここでは、事業者が見落としやすい場面を確認します。

6-1. SNS投稿後に削除を求められる

 イベント写真や来店写真をSNSに投稿した後、本人から削除を求められることがあります。顔がはっきり写っている場合や、勤務先・家族・知人に見られたくない事情がある場合は、特に問題になりやすい場面です。SNSでは第三者に保存・拡散されることもあるため、投稿前に掲載可否を確認しておくことが大切です。

6-2. 従業員の退職後に写真の掲載が問題になる

 従業員の写真を採用ページや会社紹介ページに掲載している場合、退職後に「写真を削除してほしい」と言われることがあります。退職後の取扱いを決めていないと、会社としてはそのまま使えると思っていても、本人は退職後まで掲載されるとは思っていなかったという食い違いが生じます。従業員写真を使う場合は、退職時の削除対応も含めて整理しておくとよいでしょう。 

6-3. 広告利用の範囲で認識がずれる

 撮影時には「ホームページに載せる」と説明していた写真を、後から広告バナーやチラシに使うと、本人の想定を超える場合があります。商品やサービスの宣伝に本人の写真が使われる場合、その人が商品を推薦しているように見えることもあるため、広告利用まで了承を得ていたかを確認しておく必要があります。 

7. 想定事例

 ここでは、肖像権使用同意書を用意していなかったことで、掲載後に対応が必要になった想定ケースを紹介します。

A社の事例:お客様の写真を広告に転用したケース

 A社は、美容サロンの雰囲気を紹介するため、来店したお客様に協力してもらい、施術中の様子を店内で撮影しました。撮影時には「ホームページに掲載してもよいですか」と確認し、お客様から了承を得ていました。

 その後、A社は同じ写真を折込チラシやSNS広告にも使うことにしました。しかし、お客様に確認していたのはホームページへの掲載についてであり、チラシや広告への利用までは明確に伝えていませんでした。そのため、広告利用の段階で、改めて本人に確認したり、別の写真に差し替えたりする対応が必要になりました。

 このケースでは、撮影やホームページ掲載については了承を得ていたものの、広告利用まで含めた同意が明確ではありませんでした。人物写真を事業で使う場合は、「撮影してよいか」だけでなく、ホームページ、SNS、広告、チラシなど、どの媒体で、どの目的で使うのかを同意書で確認しておくことがポイントです。

8. まとめ

 最後に、この記事のポイントを3点に整理します。

  1. 肖像権使用同意書は、写真や動画に写る本人から、使用目的や掲載媒体について同意を得るための書類
  2. SNS、広告、採用ページ、従業員写真、未成年の写真などは、後から認識のずれが起きやすいため、同意の範囲を明確にしておく
  3. 同意書では、使用する写真・動画、使用目的、掲載媒体、使用期間、加工の可否、削除依頼への対応を確認する

 まずは、事業で使用している人物写真や動画について、どこで、何のために、いつまで使う同意を得ているのかを一度整理してみてください。

*記事内の事例(ケース)については、フラット経営事務所・行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。

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