今期の利益はどこに着地しそうですか?決算前に確認したい売上・粗利・固定費・資金繰り

銀行や税理士から「今期の利益はどのくらいになりそうですか」と聞かれて、すぐに答えられず戸惑った経営者の方は少なくありません。試算表は毎月受け取っていても、期末までの売上や費用を見込んで答えるのは簡単ではないためです。
ただ、利益の着地は、決算を待たなくてもおおよそ見通せます。
この記事では、今期の利益の着地予測を立てる考え方と、決算前に確認したい売上・粗利・固定費・資金繰りの4つの項目を、財務担当者がいない会社でも確認できるように整理します
1. 決算が出てから考えるのでは遅い理由
まず、なぜ決算前に利益の着地を見ておく必要があるのかを整理します。 決算書を受け取ってから今期の結果を知るだけでは、今期中にできる対応が限られ、値上げや費用の見直しが翌期に回りやすくなるためです。
1-1. 決算書を見る頃には、今期に打てる手は限られている
決算書は、終わった1年の結果を確認するための書類です。決算書を見て「今期は思ったより利益が残らなかった」と気づいても、その時点では今期中にできる対応は多くありません。
値上げも、固定費の見直しも、外注費の調整も、効果が出るまでに時間がかかります。決算が締まってから問題に気づくと、対応はどうしても翌期からになり、利益が残りにくい状態をしばらく引きずることがあります。
逆に、期の途中で利益の着地見込みが分かっていれば、残りの期間で手を打つ余地が生まれます。決算書を事後確認だけの書類にしないためにも、決算前におおよその着地を見ておくと、今期中に何を見直すか判断しやすくなります。
1-2. 試算表を「見ている」ことと「見通せている」ことは別
税理士から試算表を受け取っていても、それだけで今期の見通しが立っているとは限りません。試算表は、あくまで過去何か月かの結果だからです。
試算表の数字をどう読むかについては、「決算書を経営判断に活かすには?見るべき数字と見方の順番を解説」で整理しています。
ここで確認したいのは、試算表の数字を期末までの見通しに変えることです。過去の結果を眺めるだけで終わらせず、残り期間の売上や費用を加えて考えると、値上げ、費用見直し、資金繰りの準備に動きやすくなります。
2. 着地予測は「実績+残り見込み」の足し算でいい
着地予測というと難しく聞こえるかもしれません。しかし、最初から細かく作り込む必要はありません。まずは「ここまでの実績」に「残り期間の見込み」を足して、今期の利益がどのあたりに落ち着きそうかを見ていきます。
2-1. 手元の試算表に、残り期間の見込みを足すだけ
利益の着地予測は、「ここまでの実績」に「残り期間の見込み」を足すだけでも始められます。細かい予算や事業計画がなくても、大まかな見通しを持つことはできます。
たとえば期首から8か月分の試算表があるなら、そこまでの売上・粗利・固定費の実績に、残り4か月分の見込みを足します。残り期間の売上は、受注済みや契約済みでほぼ確実なものを中心に置きます。「取れたらいいな」という商談中の売上は、確実な売上とは分けて考えると、見通しが甘くなりにくくなります。
費用側は、毎月ほぼ一定の固定費に、採用に伴う人件費、外注費、広告費など、すでに予定している費用を加えます。設備投資を予定している場合、利益の見通しには減価償却費などを反映し、購入代金の支払いは資金繰りで別に確認します。これで出る数字は、あくまで大まかな見込みです。それでも、何も見通しがない状態より、残り期間で何を見直すべきか判断しやすくなります。
着地予測の考え方は、難しいものではありません。まずは全体像を図で見ておきましょう。

図のように、ここまでの実績に残り期間の見込みを足すだけでも、今期の利益がどのあたりに着地しそうかが見えやすくなります。最初から細かく作り込むよりも、まずは大まかな見通しを持つだけで十分です。
2-2. ズレても大丈夫。毎月見直せば精度は上がる
着地予測は、最初から正確に当てるためのものではありません。早めに状況をつかみ、必要な対応を考えるためのものです。そのため、実際の結果とズレても問題ありません。
月が進むごとに実績部分が増え、見込み部分は少なくなっていきます。最初は大まかな予測でも、毎月見直していけば、期末に近づくほど数字の見え方は自然に絞られていきます。
毎月の数字を見る習慣づくりについては、「月次決算が続かない理由とは?まず見る4つの数字と続け方」もあわせてご覧ください。
3. 着地予測で見ておきたい4つの項目
今期の利益を見通すときは、売上だけを見ても十分ではありません。売上・粗利・固定費・資金繰りの4つの項目を分けて見ることで、利益がどのあたりに落ち着きそうか、手元資金に無理が出ないかを考えやすくなります。
3-1. 売上:「ほぼ確実」と「期待」を分ける
残り期間の売上は、確度を分けて見込みます。受注済み・契約済みの売上と、まだ商談中の売上を同じ扱いにすると、今期の利益を楽観的に見積もりやすくなるためです。
見通しの土台には、まず「ほぼ確実」な売上を置きます。商談中の売上や、取れたら上振れになる売上は、別枠で考えます。こうすると、慎重な見通しを持ちやすくなり、値上げや費用見直しなどの判断も早めにしやすくなります。
売上を楽観的に見込みへ入れすぎると、利益にも資金繰りにも余裕があるように見えてしまいます。着地予測では、売上を確度ごとに分けて慎重に見込む方が、実際の経営判断に使いやすくなります。
3-2. 粗利:売上ではなく粗利で着地を見る
利益の見通しは、売上だけでなく粗利で見ることが欠かせません。売上が計画どおりでも、外注費の増加や値引きによって粗利が薄くなっていれば、最終的に残る利益は下がるためです。
ここまでの実績で、粗利率が想定より下がっていないかを確認します。すでに粗利率が下がっている場合は、その傾向が残り期間も続く前提で考えます。
売上の着地だけを見て安心していると、利益の見通しとのズレに決算まで気づけないことがあります。特に外注費や仕入れが増えている会社では、売上よりも粗利の動きを優先して確認したいところです。
3-3. 固定費:残り期間で増えるものはないか
固定費は、残り期間で増える予定がないかを見ておきます。採用に伴う人件費、家賃やリース料の変更、サブスクリプションの追加など、期の途中から増える固定費は、今期の利益を押し下げるためです。
毎月ほぼ一定だからこそ、固定費は一度増えると期末まで影響し続けます。増える予定があるなら、その分も見込みに入れて、利益の着地を計算し直します。
固定費は「今月だけ我慢すればよい支出」ではありません。翌期以降も続く支出であれば、今期の利益だけでなく、来期の利益にも影響します。
3-4. 資金繰り:利益の着地と手元資金の見通しは別で考える
利益の見通しが立ったら、手元資金の動きも分けて確認します。黒字で終わりそうでも、入金や支払いのタイミングによっては、手元資金が窮屈になることがあるためです。
売掛金の回収が遅い、外注費や仕入れの支払いが先に来る、借入元本の返済がある、納税資金を用意する必要がある。こうした資金の動きは、利益の数字だけでは把握しきれません。支払利息は費用に表れますが、借入元本の返済は損益計算書の費用には出ないため、利益だけを見ていると手元資金の減り方を見落としやすくなります。
さらに、法人税等のほか、消費税など、利益の見通しとは分けて資金を用意したい納付もあります。正確な税額は税理士に確認するとしても、経営判断としては、期末前後にどのくらい資金が必要になりそうかを早めに見ておきたいところです。
利益の数字と手元資金の動きが別物であることを、図で確認しておきましょう。

図のように、黒字で終わりそうでも、納税や返済、支払いのタイミングによっては手元資金が窮屈になることがあります。
月ごとの資金の見方については、「利益が出ているのに資金繰りが苦しい会社が資金繰り表で確認したい5つの項目」で整理しています。
4. 利益の着地が厳しそうなときに、先に見直せること
利益の見通しが厳しそうなときでも、期中であれば見直せることがあります。決算後に結果を知ってからではなく、残り期間で何を変えられるかを整理します。
・値上げ・価格の見直し
これから受ける案件について、価格や条件を見直します。すべての取引を一度に変えるのではなく、新規案件や更新時期を迎える契約から、見積額、追加対応の扱い、支払条件を整えていきます。
・固定費・外注費の見直し
期末まで利益に影響し続ける費用から優先して見直します。毎月発生する固定費や、案件ごとに粗利を削っている外注費は、残り期間の利益に直接影響します。
・採算の薄い案件の整理
利益を削っている案件や取引先の条件を見直します。受注額だけで判断せず、粗利や案件ごとの利益で見たときに続けるべきか、条件を変えるべきかを考えます。
・融資相談は資金が窮屈になる前に行う
利益や資金繰りの見通しが立っていれば、資金が窮屈になる数か月前から金融機関へ相談しやすくなります。手元資金が減ってから慌てて動くより、早めに状況を説明できるほうが、借入条件や返済計画も相談しやすくなります。
これらは、決算後に気づいてからでは動きにくいものです。着地予測の価値は、結果を当てることだけではなく、期中に先に動ける状態を作ることにあります。
5. 利益の着地が良さそうなときに忘れやすい準備
利益が出そうな年にも、期中に考えておきたいことがあります。黒字で終わりそうだからといって、手元資金をすべて自由に使えるわけではありません。納税資金や翌期の投資判断も、早めに分けて考えておきます。
利益が出そうなときは、まず納税資金を残しておきます。正確な税額は税理士に確認するとしても、経営判断として見たいのは、決算後の納税で資金繰りが窮屈にならないだけの資金を確保できるかどうかです。
そのうえで、賞与を出すか、翌期に向けた投資をするか、借入の繰上返済を検討するかといった使い道を考えます。利益の見通しが早めに立っていれば、感覚で使うのではなく、手元資金、納税、返済、投資の順番を落ち着いて整理できます。
利益の見通しが立つと、次にどこへお金を使い、どれだけ手元に残すかを落ち着いて判断できます。
6. 想定事例
ここでは、利益の着地や期末前後の資金の動きを見落としやすい2つの想定事例を紹介します。自社の状況に当てはめて考える際の参考にしてください。
A社の事例:決算後に赤字を知り、打ち手が翌期にずれたケース
デザイン制作を行うA社は、毎月試算表を受け取っていました。しかし、期末までの売上や費用を見込んで、今期の利益がどのあたりに着地しそうかまでは確認していませんでした。日々の案件対応に追われ、数字は決算のときに見ればよいと考えていたためです。
決算が締まってみると、外注費の増加によって粗利が薄くなり、結果は想定外の赤字でした。期の半ばには、粗利率の低下が試算表にも表れていました。しかし、期末までの見通しとして捉えていなかったため、値上げや外注費の見直しは翌期からの対応になりました。
このケースでは、数字を受け取っていたにもかかわらず、今後の見通しに変えられていなかった点が課題でした。期の途中でおおよその着地を見ていれば、価格や外注費の見直しを早めに始める余地がありました。
B社の事例:黒字着地なのに、納税と返済で資金が窮屈になったケース
設備関連のB社は、期中から利益の着地をある程度把握しており、今期は黒字で終わりそうだと考えていました。
ところが決算後、納税と借入元本の返済時期が重なり、手元資金が一気に窮屈になりました。利益の見通しは立っていたものの、期末前後の入金・支払い・返済・納税の動きまでは分けて見ていなかったためです。結果として、黒字でありながら支払いに追われる状態になりました。
このケースでは、利益の着地だけを見て、手元資金の見通しを分けて確認していなかった点が課題でした。納税資金の確保や返済時期を期中に確認していれば、必要な資金を事前に確保しやすくなっていました。
7. まとめ
決算前に利益の着地を見る考え方を整理してきました。最後に要点を3つにまとめます。
- 決算書で結果を知る頃には、今期に打てる手が限られる。利益の着地は期中に概算し、先に動ける状態を作る
- 着地予測は「実績+残り見込み」の足し算で始める。売上・粗利・固定費を確認し、ズレが出たら毎月置き直す
- 利益の着地と手元資金の見通しは分けて見る。納税資金や借入元本の返済まで含めて、期末前後の資金の動きを確認する
まずは手元にある直近の試算表に、残り期間の見込みを足してみてください。大まかな概算でも、期末までに何を見直すべきか整理しやすくなります。
*記事内の事例(ケース)については、フラット経営事務所・行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。
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