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決算書を経営判断に活かすには?見るべき数字と見方の順番を解説

2026 5/03
財務
2026年5月3日

 決算書や試算表が手元にあっても、仕入れ・採用・値上げ・借入といった日々の経営判断にうまく活かせていない、という声をよく聞きます。

 原因として多いのは、決算書を読めないことではなく、どの数字を、どの判断に使えばよいかが整理されていないことです。
 この記事では、決算書を経営判断に活かせない理由を整理したうえで、経営者が見るべき数字と見方の順番を解説します。

目次

1.決算書を見ても経営判断に使えない理由

 決算書を受け取っていても経営判断に使えない理由は、売上や最終利益のような目立つ数字だけを見てしまいやすいからです。売上が伸びている、黒字で終わっている。それだけでは、会社の本業の収益力や、お金の回り方までは見えてきません。

 特に中小企業では、日常的に確認している数字が売上や通帳残高に偏りやすく、在庫、売掛金、買掛金、固定費の重さまで毎月追えていないことも多いです。
 会社の状態を見るときは、売上や最終利益だけでなく、収益性、資金の回り方、安全性などをあわせて確認することが大切です。

 決算書を経営判断に使えないのは、知識不足だけが原因ではありません。
 数字の「読み方」より「使い方」が整理されていないことの方が問題なのです。

2.まず見るべきは「売上」ではなく収益力

 最初に確認したいのは、売上の大きさよりも、本業でどれだけ利益が残せているかです。
 
売上が伸びていても、原価や固定費がそれ以上に膨らんでいれば、手元に残る余力は意外と増えていないことがあります。

 まず押さえたいのは、次の2つです。

  • 粗利益(売上総利益)
    売上から売上原価(仕入れや製造コスト)を差し引いた利益です。商品やサービスを売ったとき、会社にどれだけ残るかを把握する最初の出発点になります。
  • 営業利益
    本業で実際に稼いだ利益を示す数字です。粗利益から販売費・人件費・家賃といった経費を引いたもので、本業自体がきちんと利益を出せているかを見るうえで中心になる指標です。

 ただし、粗利益と営業利益だけでは会社の資金の動きまでは見えてきません。
 利益が出ていても手元資金が苦しくなるのは、PLには映らない部分で資金が止まっているからです。資金がどこで動きにくくなっているかを確認するために、次はBSを見る必要があります。

3.BSを見ないと判断を誤る

 損益計算書(PL)だけを見ていると、会社の実態を読み違えやすくなります。
 理由は、PLが「一定期間の成果」を示すのに対し、BS(貸借対照表)は「今どんな資産や負債を抱えているか」を示すからです。



たとえば、次のような状態はPLだけでは見えてきません。

  • 売掛金の回収が遅れている
  • 在庫が積み上がっている
  • 使っていない固定資産を持ち続けている
  • 借入金に対して、現預金や利益のバランスが崩れている
  • 借入額そのものより、返済に対して手元資金の余裕が不足している

 利益が出ているように見えても、BSを確認すると資金がうまく回っていないケースがあります。決算書を経営判断に使うためには、PLで利益を確認するだけでなく、BSで資金がどこで動きにくくなっているかまで見ることが必要です。

 そのとき参考になるのが、1期分だけを見るのではなく、前期と今期のBSを並べて比較する方法です。売掛金・在庫・買掛金・借入金・現預金がそれぞれどう増減したかを追うことで、変化の方向が見えてきます。
まずBSを開いたら「現金預金」の動きを確認するのが出発点です。利益とは切り離して、手元のお金が増えているのか減っているのかをつかむことができます。

 資産が増えているなら、そこにお金が使われていることが多く、負債が増えているなら、外部から資金を調達していることが多いと考えると整理しやすくなります。
 数字の動きを追うことで、「なぜ資金繰りが苦しいのか」「何が増えすぎているのか」が自然と見えてきます。

4.意識が向きにくい在庫・売掛金・固定費・消費税

 実務で特に抜けがちなのが、在庫、売掛金、固定費です。売上ほど目に入りにくい一方で、資金繰りや経営判断に与える影響は小さくありません。決算書には数字として載っていても、日々の判断と結びつけて見られていないことは多いです。

在庫

 在庫は、持っているだけでは利益を生みません。
 売れる見込みが薄い在庫が積み上がると、その分だけ資金が眠った状態になります。販売機会を逃したくないという意識が強い会社では、「念のため多めに仕入れておこう」という判断になりやすく、気づいたときには在庫が想定以上に膨らんでいることがあります。

売掛金

 売掛金は売上の裏返しですが、回収が遅れれば手元資金はその分だけ圧迫されます。
 売上が伸びているのに資金繰りが楽にならない会社では、売掛金の増え方まで確認できていないことがあります。売上は計上されていても、入金が後になる以上、その間は会社が立て替えているのと近い状態です。

固定費

 採用・家賃・外注費・リース料などの固定費は、一度増やすと簡単には下げられません。
 売上が伸びる前提で固定費を先に増やしてしまうと、少しの売上減少でも利益が急に悪化しやすくなります。「忙しくなったから先に人を増やそう」という判断は起こりやすいものです。ただ、粗利益とのバランスを確認しないまま進めると、後から固定費の重さが経営を圧迫しやすくなります。

消費税
 見落としやすいのが、消費税の支払いです。
 売上が伸びている会社ほど納める消費税も大きくなりますが、口座に残っているお金をそのまま使えるものとしてしまうと、納税の時期に一気に資金繰りが苦しくなることがあります。利益が出ているときほど設備投資や採用に意識が向きやすいため、消費税の支払い分はあらかじめ手元資金から除いて考えておくことが重要です。

 決算書を経営判断に使うとは、こうした数字を「確認して終わり」にせず、次の意思決定にどう影響するかまで読み取ることです。

5.決算書を見ても判断を誤りやすい場面

 数字を見ているつもりでも、経営判断に活かせていない会社では、次のようなミスが起きやすくなります。

  • 売上が伸びていることだけを理由に仕入れを増やす
  • 最終利益だけを見て採用を進める
  • 営業利益の中身を見ずに「黒字だから大丈夫」と考える
  • 直近の業績悪化より、過去の蓄積だけを見て安心してしまう

 実務では、こうした場面で判断がずれるケースが多く見られます。利益が出ていても、売掛金の回収遅れや在庫の積み上がりによって手元資金が底をつけば、いわゆる黒字倒産につながるリスクがあります。

 決算書を見る目的は、数字を読むこと自体にあるのではなく、次の判断を誤らないために使うことにあります。

 決算書を読むときは、数字を個別に追うだけでなく、経営全体をどう見るかという視点も重要です。なお、 ホテル開発CFOを2年やって学んだ『〇〇の見方』でも整理されています。また、固定費や資金の流れを経営の癖として捉えるうえでは、お金が『出ていく会社』の共通点も参考になります。 

6.想定事例

A社の事例:売上だけを見て仕入れ判断を誤ったケース

 食品卸売を営むA社は、売上が前年比110%まで伸びていました。社長は「売上が増えているから悪くない」と考えていましたが、資金繰りには一向に余裕が生まれませんでした。

 実態を見直してみると、売掛金の回収が遅れ気味だったうえ、販売機会を逃したくないという意識から在庫を多めに抱えていました。PL上では売上の増加が見えていても、BSでは売上債権と棚卸資産が膨らみ、資金が眠っていたのです。

 このケースで本来必要だったのは、売上の増減だけでなく、売掛金と在庫がどの程度増えているかを定期的に確認することでした。
 売上が伸びているときほど、BSをあわせて見ないと判断を誤りやすくなります。

B社の事例:試算表を採用判断に活かせなかったケース

 サービス業のB社では、毎月試算表が届いていました。ただ、社長は売上と最終利益をざっと確認するだけで、採用の判断は「最近忙しいから」という感覚で進めていました。

 ところが、粗利益の伸びに対して人件費の増え方が大きく、本業の収益力に対して固定費が重くなっていました。 結果として、社長が想定していたほど営業利益は残っておらず、 採用後に固定費の重さが経営を圧迫する形になりました。

 売上だけを見れば採用できそうに映っても、本業の収益力とのバランスを確認すると、もう少し慎重に判断すべき局面だったのです。このケースでは、試算表を「受け取って終わりの資料」で終わらせず、採用判断の根拠として読み解く視点が必要でした。このケースでは、試算表を「受け取って終わりの資料」で終わらせず、採用判断の根拠として読み解く視点が必要でした。

7.まとめ

この記事のポイントを3点に整理します。

  1. 決算書を経営判断に使えないのは、売上や最終利益のような目立つ数字だけを見てしまいやすいから
  2. 最初に見たい数字は、本業の収益力を示す粗利益・営業利益と、資金の回り方を示す在庫・売掛金・現預金などの動き
  3. PLに加えてBSも確認することで、在庫・売掛金・現預金・借入返済のバランスが見え、仕入れ・採用・借入の判断を誤りにくい

 決算書は、詳しくなること自体が目的ではありません。次の判断を少しでも誤らないために使うものです。
まずは、売上より収益力、PLだけでなくBSも見るという順番を意識することから始めてみてください。

*記事内の事例(ケース)については、フラット経営事務所・行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。

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