株主総会の招集通知はいつまでに必要?期限・通知方法・電子メール対応の注意点

普段からLINEやチャットで株主同士の連絡を取り合っている会社では、「チャットで共有しているし、わざわざ正式な招集通知まで用意しなくてもいいだろう」と考え、正式な招集通知を用意しないまま進めてしまうことがあります。
しかし、株主総会の招集通知は、単なる日程連絡ではありません。会社の規模や株主同士の関係にかかわらず、会社法や定款に沿って行う必要があります。通知期限や通知方法を誤ると、後から決議の効力を争われるおそれがあります。
この記事では、招集通知の期限、書面通知・電子通知・口頭通知の使い分け、電子メールで通知できる条件、通知漏れが招くリスクを整理します。
1.株主総会の招集通知とは
まずは、株主総会の招集通知がどのような手続きなのかを整理します。少人数の会社でも、後から「どのように株主総会を開いたのか」を確認できるようにしておくことが大切です。
1-1.株主に「いつ・どこで・何を決めるか」を知らせる手続き
株主総会の招集通知とは、株主に対して「いつ、どこで、何を決めるために株主総会を開くのか」を事前に知らせる手続きです。会社法299条1項では、株主総会を招集する場合、一定の期間前までに株主へ通知を発しなければならないと定められています。
通知には、日時・場所・目的事項(議題)などを記載します。書面投票(書面による議決権行使)や電子投票(電磁的方法による議決権行使)を認める場合には、株主総会参考書類や議決権行使書面などの準備も必要になります。
1-2.少人数の会社ほど記録が大切になる理由
少人数の会社では、株主総会の招集通知を形式的なものと考えてしまうことがあります。しかし、株主同士の関係が変わったり、株式の相続や出資者との対立が起きたりすると、過去の株主総会をどのように開いたのかが後から確認されることがあります。
そのときに「みんな知っていたから大丈夫だった」と説明しても、通知や同意の記録がなければ、手続きの経緯を示すことが難しくなります。少人数の会社でも、後から「いつ、誰に、どのように知らせたのか」を確認できる形にしておくことが大切です。
1-3.招集通知はいつまでに必要か
通知期限は一律ではありません。会社の種類や定款の内容、書面投票・電子投票を認めるかどうかによって異なるため、自社の状況に合わせて確認する必要があります。
原則は2週間前まで
原則として、株主総会の日の2週間前までに通知を発する必要があります。ここでいう「発する」とは、通知を発送・送信することです。株主の手元に届いた日ではなく、会社が通知を出した日を基準に考えます。
非公開会社では1週間前でよいケースがある
公開会社でない株式会社(非公開会社)で、書面投票・電子投票を定めていない場合は、株主総会の日の1週間前までで足りることがあります。さらに、取締役会を設置していない非公開会社では、定款でこの期間をより短く定められる場合があります。
期限は「会社規模」ではなく類型と定款で判断する
実務では、次の順で確認すると整理しやすくなります。
- 公開会社か、非公開会社か
- 書面投票・電子投票を認めるか
- 取締役会設置会社かどうか
- 定款に通知期間を短縮する規定があるか
「株主が少ないから短くてよい」と判断するのではなく、定款と機関設計を確認してから進めることが大切です。
判断の流れを図で整理すると、次のようになります。

2.取締役会設置会社と非設置会社で何が違うか
取締役会を設置している会社かどうかで、株主総会を開くまでの手続きは変わります。特に、招集事項の決め方と通知方法は間違えやすいため、自社の機関設計を確認しておきましょう。
2-1.取締役会設置会社では招集事項を取締役会決議で決める
取締役会設置会社では、株主総会の日時・場所・目的事項などの招集事項を、取締役会決議で定める必要があります。株主へ通知を出す前に、取締役会で招集事項を決定し、その記録を残しておく必要があります。
2-2.取締役会設置会社では書面通知が原則必要
また、取締役会設置会社では、株主総会の招集通知を書面で行う必要があります(会社法299条2項)。株主が2名・3名であっても、口頭やチャットで日程を共有しただけでは、正式な招集通知として扱えない場合があります。自社が取締役会設置会社かどうか判断できていない場合は、「取締役会の設置義務を知っていますか?」も先に確認しておくとよいです。
2-3.取締役会非設置会社では通知方法が柔軟になる場合がある
取締役会を設置していない非公開会社で、書面投票・電子投票も定めていない場合には、口頭や電話での通知が直ちに違法になるとは限りません。ただし、後から通知内容を証明できないと、株主総会をどのように開いたのか説明しにくくなります。実務上は、記録に残る方法を選ぶ方が安全です。
3.招集通知は電子メールで送れるのか
招集通知を電子メールで送る場合は、事前に株主の承諾を得ているかがポイントになります。普段からメールで連絡していても、招集通知をメールで受け取ることまで承諾しているとは限らないため、通知前に確認しておきましょう。
3-1.株主の承諾があれば電磁的方法による通知が可能
会社法299条3項では、株主の承諾を得た場合、書面通知に代えて電磁的方法(電子メール等)による通知を発することができると定められています。
電子メールで招集通知を送りたい場合は、事前に株主ごとの承諾を取得し、送信先アドレスとあわせて記録を残しておくことが大切です。
3-2.承諾なしのメール通知は書面通知の代わりにならない
普段からメールでやりとりしていることと、電磁的方法による招集通知を承諾していることは別です。
取締役会設置会社など、書面通知が必要な会社で株主の承諾を得ずにメールだけで通知した場合、会社法上の通知方法を満たしていないと判断されるおそれがあります。電子メールを使う場合は、「承諾を取ってから送る」という順番を意識しましょう。
4.口頭通知・招集手続の省略が認められるケース
少人数の会社では、口頭通知や招集手続の省略が使える場面もあります。ただし、手続きを簡略化できる場合でも、後から確認できる記録を残しておくと安心です。
4-1.株主全員の同意があれば招集手続を省略できる
取締役会を設置していない少人数の会社では、株主総会の日程を口頭や電話で共有しているケースもあります。特に、書面投票や電子投票を定めていない会社であれば、口頭で通知したこと自体が直ちに問題になるとは限りません。
ただし、口頭だけで済ませると、後から「誰に、いつ、どの内容を伝えたのか」を確認できません。相続、株式譲渡、経営方針の対立などに備える意味でも、少人数の会社であってもメールや書面など記録に残る方法を選ぶと安全です。
また、株主全員の同意がある場合は、招集手続を省略して株主総会を開くことができます。この場合も、同意書、メール、議事録などで「全員が同意していた」ことを後から確認できるようにしておきましょう。
4-2.一人会社でも記録を残した方がよい理由
一人会社では、「株主は自分だけだから、記録を残さなくてもよい」と考えてしまうことがあります。
しかし、一人会社であっても、融資審査、補助金申請、株式譲渡、事業承継、M&Aなどの場面で、株主総会の記録を求められることがあります。後から会社の意思決定を説明できるようにするためにも、招集手続を省略した経緯や株主総会議事録は残しておきましょう。
4-3.通知漏れ・方法の誤りが招くリスク
招集通知の漏れや方法の誤りは、後から株主総会決議を争われる原因になり得ます。単なる連絡ミスとして扱わず、会社運営への影響も意識しておきましょう。
4-4.決議取消しの訴えが問題になり得る
招集通知の漏れや方法の誤りがあると、株主総会決議の取消しが問題になることがあります。会社法831条1項1号では、招集手続や決議方法が法令・定款に違反する場合などに、株主総会決議の取消しを請求できることが定められています。
手続きミスがあれば直ちにすべての決議が取り消されるわけではありません。ただし、役員選任、役員報酬、定款変更、増資などの重要な決議で招集手続に不備があると、会社運営に大きく影響することがあります。
4-5.少人数株主会社ほど関係変化で後から問題化しやすい
少人数株主会社では、共同創業者の退職、相続、株式譲渡、出資者との対立などをきっかけに、過去の株主総会の進め方が確認されることがあります。
そのときに通知や同意の記録が残っていないと、「誰に、いつ、どのように知らせたのか」を説明しにくくなります。少人数の会社ほど、日頃から記録を残しておくことが会社を守る材料になります。
5.中小企業が確認したい実務チェックポイント
最後に、株主総会の招集通知を整備する際に確認したいポイントを整理します。定款、取締役会の有無、株主名簿、同意記録、議事録との整合性を順に見ておきましょう。
① 定款を確認する
通知期限、通知方法、期間短縮の規定があるかどうかを確認します。
② 取締役会設置会社かどうかを確認する
登記事項証明書で確認します。取締役会設置会社であれば、招集事項の取締役会決議と書面通知の流れを整える必要があります。
③ 株主名簿を整備する
株主の住所、連絡先、電磁的方法による通知への承諾の有無を最新の状態にしておきます。相続や株式譲渡があった場合は、先に株主名簿を更新しておきましょう。
④ 省略する場合は記録を残す
招集手続省略の同意は口頭だけで済ませず、同意書やメールで記録に残します。
⑤ 議事録と通知内容を一致させる
開催日時、場所、議題が招集通知と議事録で一致していることを確認します。総会後の議事録作成については、「株主総会議事録の記載事項を徹底解説!」でまとめています。
6.想定ケース
ここでは、株主総会の招集通知で問題になりやすい場面を、2つの想定ケースで整理します。
A社の事例|取締役会設置会社なのにチャットだけで通知していたケース
A社は、創業メンバー3名が株主の会社です。普段からチャットで連絡を取り合っていたため、株主総会の日程もチャットで共有するだけで済ませていました。
しかし、A社は取締役会設置会社でした。そのため、招集事項を取締役会で決定した上で、書面通知または株主の承諾を得た電磁的方法による通知を行う必要がありました。
株主が少人数でも、取締役会設置会社では会社法上の通知ルールに沿って進める必要があります。
B社の事例|全員同意で省略していたが記録がなかったケース
B社は、家族だけが株主の会社です。毎年全員が集まって株主総会を行っていたため、正式な招集通知や招集手続省略への同意書は作成していませんでした。
その後、相続により株主構成が変わり、過去の役員選任や役員報酬の決議手続について確認を求められました。しかし、同意記録も議事録も十分に残っていなかったため、当時の手続きを確認するのに時間がかかりました。
招集手続を省略する場合でも、全員が同意していたことや、どのように株主総会を開いたのかを後から確認できる形にしておくことが大切です。
7.まとめ
株主総会の招集通知について、実務上確認しておきたいポイントは次の3つです。
- 招集通知の期限は、会社の種類・定款・議決権行使方法によって変わります。原則は2週間前ですが、非公開会社で書面投票・電子投票を定めていない場合は、1週間前でよいケースもあります。
- 取締役会設置会社では、招集事項を取締役会で決定し、原則として書面で通知する必要があります。電子メールで通知する場合は、事前に株主の承諾を得ておくことが必要です。
- 少人数会社や家族会社でも、通知漏れや方法の誤りは後から問題になることがあります。招集手続を省略できる場合でも、通知や同意の記録を残しておきましょう。
まずは定款と登記事項証明書で、自社がどのようなルールで株主総会を開く会社なのかを確認することが大切です。増資や株式発行を行う場合は、株主総会手続だけでなく株式発行手続全体の確認も必要です。詳しくは「株式発行手続きと投資契約を徹底解説!」をご覧ください。
*記事内の事例(ケース)については、フラット経営事務所・行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。
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