コラム

従業員を雇う前に知っておくべき手続きのポイント!法的義務と注意点

 従業員を雇うことは、企業の成長に欠かせないステップですが、採用にはさまざまな法的手続きや義務が伴います。これらの手続きを正しく理解し、適切に行うことは、労務トラブルを未然に防ぎ、企業運営の安定を図るために非常に重要です。本記事では、従業員を雇う際の手続きのポイントや法的義務、注意点について、具体的な事例を交えながら詳しく解説します。

 

 

1. 従業員を雇う前に必要な準備

 まず、従業員を雇う前にしっかりと準備を整えておくことが重要です。これには、企業側の法的義務や実務上の手続きが含まれます。具体的には以下のような事項を確認し、対応しておく必要があります。

1.1労働保険・社会保険への加入手続き

 従業員を雇う場合、労働保険(雇用保険、労災保険)や社会保険(健康保険、厚生年金)に加入する必要があります。特に正社員を採用する場合、これらの保険加入手続きが必須です。従業員が非正規労働者であっても、勤務時間や日数に応じて加入義務が生じることがあるため、雇用形態にかかわらず確認が必要です。

事例: ある中小企業がパートタイム従業員を雇った際、勤務時間が基準を超えたため、健康保険と厚生年金への加入手続きを怠ったことで、後に未払い保険料を求められたという事例があります。これを防ぐためにも、雇用形態に合わせた保険加入条件を事前に確認しましょう。

 

1.2就業規則の整備

 労働基準法では、常時10人以上の従業員を雇用する企業に対して、就業規則の作成・届出が義務付けられています。就業規則には、勤務時間、賃金、休日などの労働条件を明確に記載する必要があります。また、企業の規模にかかわらず、従業員に分かりやすく労働条件を提示するため、就業規則の整備はおすすめです。

フラット法務事務所からのコメント
 就業規則を整備しておくと、従業員とのトラブルを未然に防げるので、しっかりと作成することを強くお勧めします。従業員数が10人未満の場合でも、明確なルールを設けておくことで、トラブルが起きにくくなります。

 

2. 労働契約書の作成と労働条件通知書の交付

 従業員を雇う際には、雇用契約を締結する必要があります。その際、労働契約書の作成と労働条件通知書の交付が求められます。これらは、雇用条件を明確にするための重要な書類です。

2.1労働契約書

 労働契約書には、賃金、勤務時間、休日、業務内容など、基本的な労働条件を明記します。口頭での契約ではなく、必ず書面での取り交わしを行うことが重要です。

事例: ある企業が契約書を口頭のみで行った結果、従業員が業務内容や待遇に不満を抱き、トラブルに発展したケースがありました。契約書があれば、双方が合意した内容を証拠として残すことができ、トラブルの回避につながります。

 

2.2労働条件通知書

 労働基準法では、従業員を雇う際、労働条件を明示する義務があります。賃金、労働時間、業務内容など、特に重要な労働条件については、書面で通知しなければなりません。

注意点: 労働条件通知書は、書面で交付するのが基本ですが、電子メールやクラウドシステムでの交付も認められています。ただし、受領確認ができる仕組みを整えることが求められます。

 

2.3入社時の誓約書の作成

 誓約書は、従業員が企業のルールや方針に従うことを誓約するための書類です。例えば、情報漏洩防止、会社財産の取り扱いに関する規定などを盛り込みます。

事例: ある企業が誓約書を求めなかったため、退職した従業員が企業の機密情報を外部に流出させるトラブルに発展したケースがありました。誓約書があれば、企業の規律を従業員に明確に示し、リスクを抑えることが可能です。

 

2.4身元保証書の取得

 身元保証書は、従業員が業務上で損害を与えた場合に、保証人がその賠償責任を負うことを明記した書類です。特に金銭を扱う職種や、企業に対してリスクが大きい職務を担う従業員に対しては、身元保証書の取得が有効です。

フラット法務事務所からのコメント
 身元保証書を取得しておくことで、従業員が故意や過失により会社に損害を与えた場合、保証人に責任を問うことができるため、企業リスクを低減できます。ただし、保証期間や範囲を明確に定める必要があります。

 

3. 労働保険と社会保険の手続き

 従業員を雇う場合、雇用保険や労災保険、健康保険、厚生年金などの社会保険への加入が必要です。これらの保険は、企業と従業員の双方を保護するための制度であり、加入手続きを適切に行うことが求められます。

  • 雇用保険 雇用保険は、従業員が失業した際の生活保障を目的とする保険です。従業員が週20時間以上働き、かつ31日以上の雇用見込みがある場合、雇用保険に加入させる義務があります。
  • 労災保険 労災保険は、労働者が業務中や通勤途中にケガや病気になった際に補償を行う保険です。正社員だけでなく、パートタイムやアルバイトの従業員にも適用されるため、従業員の雇用形態にかかわらず加入が義務付けられています。
  • 社会保険(健康保険・厚生年金) 正社員をはじめ、一定の条件を満たすパートタイム従業員も社会保険に加入する必要があります。具体的には、勤務時間が正社員の4分の3以上である場合などが対象です。
事例: ある企業がパートタイム労働者の社会保険加入手続きを怠ったため、従業員から訴えを起こされ、多額の保険料を追納する羽目になったことがあります。このようなトラブルを防ぐためにも、早めの確認と手続きが重要です。

 

4. 賃金の支払いと労働時間の管理

 従業員の賃金は、労働基準法に基づいて適切に支払わなければなりません。また、労働時間の管理も法的に重要な義務です。

  • 賃金の支払い 賃金は、月に1回以上、一定の期日に現金または振込で支払う必要があります。賃金の遅延や未払いは法的なリスクが高いため、十分に注意が必要です。
  • 労働時間の管理 従業員の労働時間を適切に管理することは、過重労働や残業代未払いといったトラブルを防ぐために不可欠です。特に、労働時間が法定時間を超える場合には、割増賃金を支払う義務があります。
フラット法務事務所からのコメント
 労働時間を正確に管理するために、勤怠管理システムの導入を検討する企業も増えています。これにより、従業員の労働時間を正確に把握し、適切な賃金計算が可能になります。

 

5. まとめ

 従業員を雇う際には、様々な法的手続きや義務が伴います。労働契約の締結、社会保険への加入、労働時間の管理など、適切な手続きを踏むことで、労務トラブルを未然に防ぎ、従業員との信頼関係を築くことができます。企業の成長に伴い、従業員を雇う際は、法的義務と実務的な対応をしっかりと確認し、準備を怠らないようにしましょう。

このように、しっかりとした準備と手続きを行うことで、従業員を安心して迎え入れることができ、企業運営をスムーズに進めることが可能になります。

 

*記事内の事例(ケース)については、行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。

 

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