誓約書と確約書の違いとは?法的効力・使い分け・書き方を行政書士が解説

1.はじめに――誓約書と確約書、どちらを使えばいい?
取引先から「誓約書を提出してください」と言われたとき、「ひな形をそのまま使ってもよいのか」「どこまで書けばよいのか」と迷う方は少なくありません。また、調べていくうちに「確約書とは何が違うのか」と疑問を持つ場面もあるでしょう。
ビジネスの現場では、誓約書や確約書がさまざまな場面で使われます。
入社時の秘密保持、業務委託先との約束、退職時の競業避止など、使われる場面は多岐にわたります。ただ、使い方を誤ると、後から内容の解釈や効力をめぐってトラブルになるおそれがあります。
この記事では、誓約書と確約書の違い、法的効力と使い分け、書き方のポイントを、行政書士が実務の視点を踏まえてわかりやすく解説します。
2.誓約書・確約書に法律上の明確な定義はある?
まず、大前提として押さえておきたいのがこの点です。誓約書と確約書には、法律上の明確な定義がありません。「誓約書はこういうもの」「確約書はこういうもの」と定めた法律の条文は存在しません。
実務では使い分けの傾向はあるものの、法的な効力は書類の「名称」ではなく、記載されている内容の具体性・合理性によって判断されます。
つまり、どんなに整った書式でも、内容が曖昧であれば効力を持たない可能性があります。逆にいえば、名称が何であれ、具体的な内容がしっかり書かれていれば法的効力を認められやすくなります。
この点が、誓約書・確約書を扱ううえで、もっとも重要な前提です。
3.誓約書と確約書の違いと使い分け
法律上の定義はないものの、実務ではそれぞれ異なるニュアンスで使われています。
・誓約書は、一方が相手に対して「〜することを誓います」と約束する文書です。道義的・精神的な誓いのニュアンスが強く、約束する側(差し出す側)が一方的に作成します。
・確約書は、特定の行為や事実を「確実に約束する」「保証する」という意味合いを持つ文書です。誓約書よりも、履行の確実性や責任の重さを強調したい場面で使われることが多くあります。
| 書類名 | 主なニュアンス | よく使われる場面 |
| 誓約書 | 誓い・約束 | 入社時・秘密保持・競業避止・反社排除 |
| 確約書 | 確実性・責任の明示 | 納期確約・品質保証・履行保証 |
ただし、繰り返しになりますが名称よりも中身が重要です。
「誓約書」という名称でも、確約書に近い内容を盛り込むこと自体に問題はありません。
4.覚書・合意書・契約書との違い
誓約書・確約書と混同されやすい書類について、簡単に整理しておきます。
覚書・合意書は、双方が合意した内容を記録する文書です。
誓約書・確約書が「一方的な約束」なのに対し、覚書・合意書は双方向の合意を前提としています。既存の契約の補足や変更に使われることも少なくありません。
契約書は、当事者間で合意した内容を書面として明確に残す文書です。
誓約書・確約書に比べて、双方の権利義務を整理しやすく、後日の証拠として機能しやすい点に特徴があります。
| 書類名 | 作成者 | 法的性質 |
| 誓約書・確約書 | 一方が作成・差し出す | 一方が相手に差し入れる約束の文書 |
| 覚書・合意書 | 双方が合意して作成 | 双方で確認・整理する文書 |
| 契約書 | 双方が合意して作成 | 双方の合意内容を明確に定める文書 |
「双方の合意を記録したい」なら覚書・合意書、「相手に一方的な約束をさせたい」なら誓約書・確約書が適しています。
5.誓約書・確約書に法的効力を持たせるための記載項目
誓約書・確約書に法的効力を持たせるためには、次の項目を漏れなく盛り込むことが重要です。
5-1.当事者の明示
誰が誰に対して約束するのかを明確にします。たとえば、「甲(〇〇株式会社)に対して、乙(〇〇)は以下のとおり誓約します」といった書き方です。
5-2.約束の具体的な内容
「適切に管理する」などの曖昧な表現を避け、「第三者に開示しない」「競合他社に就業しない」など、行為を具体的に記載します。
5-3.期限・対象範囲
いつから・どの期間・どの範囲に適用されるかを明記します。
5-4.違反した場合の取扱い
損害賠償義務・契約解除などの効果を記載しておくと、抑止力と証拠力が高まります。
5-5.作成日・署名・押印欄
日付が不明確な書類は、証拠として弱くなりやすいため注意が必要です。
6.誓約書・確約書の書き方のポイント
法的に有効な誓約書・確約書を作るための書き方のポイントを整理します。
6-1.主語を曖昧にしない
「当社は〜」「関係者は〜」といった書き方では、後から解釈が分かれるおそれがあります。 「乙(氏名・会社名)は〜」というように、主体を具体的に特定してください。
6-2.約束の内容を動作レベルで書く
「機密情報を適切に扱う」ではなく、「第三者への開示・漏えい・複製を行わない」のように、禁止行為や義務の内容を具体的に書くことが大切です。
6-3.期限・対象範囲を必ず書く
競業避止であれば「退職後〇年間・〇〇業種に限る」、秘密保持であれば「契約終了後〇年間」といった形で範囲を限定します。これは、後の紛争予防だけでなく、法的な合理性の観点からも重要です。
6-4.違反時の扱いを書く
「違反した場合は損害賠償責任を負う」などの効果を明示しておくと、証拠書類としての実効性が高まります。
6-5.ひな形をそのまま使わない
インターネット上で見つかるひな形は、自社の状況に合っていないことがほとんどです。 特に競業避止や秘密保持の範囲は、広すぎると合理性を欠くとして、制限的に解釈される可能性があります。
7.実務でよくあるトラブルと注意点
実務では、誓約書の内容を十分に詰めないまま提出したり、形式面の確認が不十分だったりしたことから、後 から効力や解釈をめぐって問題になることがあります。
7-1.内容が曖昧な誓約書は効力が限定されやすい
内容が曖昧すぎる誓約書は、紛争になった際に「合理性を欠く」「対象範囲が不明確」として、効力が制限的に解釈されるリスクがあります。 特に競業避止に関しては、禁止する業種・範囲・期間が広すぎると、合理性を欠くとして認められにくくなる可能性があります。
7-2.署名のみで押印がない誓約書の扱い
一般的な契約や誓約書では、押印がなければ無効になるわけではありません。ただし、後日の争いを防ぐため、署名に加えて押印や電子契約の方法を用いて、本人確認と証拠化を意識することが重要です。
7-3.誓約書の「とりあえず提出」が後から問題になるケース
取引先が用意した誓約書は、当然ながら相手方に有利な内容になっていることが少なくありません。「とりあえず提出してしまった」という事例は実務でもよくありますが、署名・押印の前に内容を必ず確認するようにしましょう。
8.事例で見る誓約書・確約書の注意点
誓約書や確約書は、内容が曖昧なまま作成すると、実際の紛争場面で解釈が分かれやすくなります。ここでは、実務で起こりやすいケースを2つ紹介します。
A社の事例:競業避止の範囲が広すぎた例
A社では、退職する従業員に対して、入社時から「競業避止誓約書」を提出させていました。
しかし、その誓約書には「退職後2年間、同業他社への就職を禁ずる」という一文しかなく、業種・地域・職種の限定がありませんでした。その後、元従業員が競合他社に転職したため、A社は損害賠償を求めましたが、誓約書の内容が広すぎるうえ具体性を欠くとして、効力が争われることになりました。
ポイント:
競業避止については、業種・地域・期間・役職を限定し、合理的な範囲に絞ることが重要です。
B社の事例:秘密情報の定義が曖昧だった例
B社は、外部のフリーランスデザイナーと業務委託契約を締結し、秘密保持確約書も提出させていました。 しかし、その確約書には「業務上知り得た情報を漏らさないこと」とだけ記載されており、「秘密情報とは何か」の定義がありませんでした。その後、情報漏えいが発覚しましたが、何が秘密情報に当たるのかが明確でなかったため、損害賠償請求の範囲を立証することが困難になりました。
ポイント:
「秘密情報の定義」は、実際の紛争場面を見据えて具体的に記載しておくことが重要です。
9.まとめ
最後に、押さえておきたいポイントを3つにまとめます。
- 誓約書・確約書に法律上の明確な定義はなく、法的効力は名称ではなく記載内容によって決まります。
- 使い分けの目安として、一方的な約束であれば誓約書・確約書、双方の合意内容を確認・整理するのであれば覚書・合意書が中心になります。
- 法的効力を持たせるには、当事者・内容・期限・範囲・違反時の取扱いを具体的に記載することが重要です。
ひな形のコピーや曖昧な文言のままでは、いざというときに「期待した効力が認められなかった」という事態を招きかねません。
特に、退職時の競業避止や、業務委託先との秘密保持など、リスクの大きい場面では、事前に専門家へ確認することをおすすめします。
なお、覚書・念書・合意書との詳しい使い分けについては「[覚書、念書、誓約書、合意書、契約書の適切な使用方法]」の記事もあわせてご参照ください。
*記事内の事例(ケース)については、フラット経営事務所・行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。
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