コラム

投資契約書と株主間契約書の違いとは?スタートアップ企業ベンチャー企業に重要論点を解説

 スタートアップ企業やベンチャー企業が成長を遂げるためには、資金調達と内部統制が重要な課題となります。投資契約書と株主間契約書は、これらの企業が投資家から資金を調達し、株主間の関係を円滑にするための重要な法的文書です。本記事では、投資契約書と株主間契約書の違いを詳しく解説し、実際の事例や専門家のコメントを交えて、企業がこれらの契約書をどのように活用すべきかを考察します。

 

 

1.投資契約書とは?

1.1基本的な概要

 投資契約書は、企業が投資家から資金を受け取る際に締結する契約書です。主に以下のようなものが含まれます。

  1. 投資条件の明示
    • 投資金額、株価、株式の種類(普通株式、優先株式など)。
    • 資金提供のタイミングと方法。
  2. 経営権の調整
    • 投資家が取締役会や経営に関与する権利。
    • 重要事項に関する決議権や拒否権。
  3. 譲渡制限
    • 投資家が保有する株式の譲渡に関する条件。
    • ロックアップ期間(一定期間、株式を売却できない)。
  4. 保証と免責
    • 企業が投資家に対して行う保証(財務状況、事業計画など)。
    • 特定のリスクに対する免責事項。

 

1.2具体例:スタートアップA社のケース

スタートアップA社は、シリーズAラウンドで大手ベンチャーキャピタルから1億円の出資を受ける際に投資契約書を締結しました。この契約書には、以下のような条項が含まれていました。

  • 出資条件:1株1000円で100,000株を発行。
  • 取締役会の構成:投資家が1名の取締役を指名する権利。
  • 優先株式の条件:配当の優先権、企業売却時の優先分配権。
  • ロックアップ期間:出資後2年間は投資家が株式を売却できない。

 

 

2.株主間契約書とは?

2.1基本的な概要

株主間契約書は、企業の株主間で締結される契約書であり、株主間の関係や企業のガバナンスに関する事項を規定します。主に以下のようなものが含まれます。

  1. 株主間の関係調整
    • 株主の権利と義務。
    • 重要決定事項における投票権の行使方法。
  2. 株式の取得と譲渡
    • 株主が追加株式を取得する際の優先権(優先購入権)。
    • 株式譲渡に関する承認手続き。
  3. 経営参加
    • 株主の経営参加に関する条件。
    • 役員の選任・解任の手続き。
  4. 紛争解決
    • 株主間の紛争解決方法(仲裁、調停)。
    • 紛争が発生した場合の具体的手続き。

 

2.2具体例:ベンチャーB社のケース

 ベンチャーB社は、設立当初から複数のエンジェル投資家が出資していました。株主間の利益や意見の対立を避けるため、以下の内容を含む株主間契約書を締結しました。

  • 優先購入権:株主が持ち株を売却する際、他の株主に優先的に購入する権利。
  • 取締役選任:一定の持ち株割合以上の株主が取締役を指名できる権利。
  • 紛争解決:紛争が発生した場合、第三者機関による仲裁を利用する条項。
  • 機密保持:株主間で共有される企業情報の機密保持義務。

 

 

3.投資契約書と株主間契約書の比較

3.1主体と関係

  • 投資契約書:企業と投資家との関係を規定し、資金調達の条件を明示します。
  • 株主間契約書:企業の株主間の関係を規定し、株主間の権利や義務を調整します。

 

3.2目的と範囲

  • 投資契約書:資金調達の手段としての側面が強く、株式の取得や譲渡に関する規定が中心です。
  • 株主間契約書:株主間の関係や企業経営における意思決定プロセスなど、より広範な規定が含まれます。

 

3.3法的効果とリスク

  • 投資契約書:投資家の資金提供と引き換えに企業が義務を負うことを規定するため、資金調達時のリスク管理が重要です。
  • 株主間契約書:株主間の契約違反や紛争に対処するための法的枠組みを提供します。

 

 

4.投資契約書と株主間契約書の実務上の重要性

事例1:C社の失敗事例

 C社は、シリーズBラウンドで新たな投資家から資金調達を行った際、投資契約書において重要な譲渡制限条項を見逃してしまいました。この結果、既存の株主が株式を譲渡する際に大きな問題が発生し、企業の資金繰りに悪影響を与えることとなりました。

事例2:D社の成功事例

 D社は、設立初期から株主間契約書を適切に整備し、全ての株主が合意した上で株式の取得や譲渡に関する優先権を明確にしました。これにより、株主間の信頼関係が強化され、企業の成長とともに円滑な資本政策を実現しました。

フラット法務事務所からのコメント
 投資契約書と株主間契約書は、企業の成長段階に応じて異なる重要性を持ちます。初期段階では資金調達が最優先事項となるため、見落としがちな投資契約書の適切な整備が不可欠です。一方で、成長段階に入ると株主間の関係調整が重要となり、株主間契約書が企業のガバナンスにおいて重要な役割を果たします。

 

 

5.投資契約書と株主間契約書の作成のポイント

5.1投資契約書の作成ポイント

  1. 投資条件の明確化
    • 投資額や株価、投資スケジュールを具体的に定める。
  2. 投資家の権利保護
    • 取締役会への参加権や特定事項に対する拒否権を適切に設定する。
  3. リスク管理
    • 保証条項と免責事項を明確にし、リスクを適切に管理する。

 

5.2株主間契約書の作成ポイント

  1. 株主間の権利調整
    • 株主の投票権や優先購入権を明確に定める。
  2. 経営参加のルール
    • 役員の選任や解任に関する手続きを規定し、透明性を確保する。
  3. 紛争解決のメカニズム
    • 仲裁や調停の手続きを明確にし、迅速な紛争解決を図る。

 

 

6.投資契約書と株主間契約書の融合

 一部の企業では、投資契約書と株主間契約書を一つの文書としてまとめることがあります。これは、投資家が企業に資金を提供すると同時に、他の株主と対等な立場での合意を形成することを目指しています。こうしたアプローチの利点と欠点を見てみましょう。

6.1利点

  1. 一貫性の確保
    • 全ての関係者が同じ文書に署名することで、契約内容の一貫性を確保できる。
  2. 透明性の向上
    • 契約内容が一つにまとめられることで、全ての株主が同じ情報を共有し、透明性が高まる。
  3. 手続きの簡素化
    • 契約書が一つになることで、交渉や締結の手続きが簡素化される。

 

6.2欠点

  1. 複雑化のリスク
    • 一つの文書に全ての条項を盛り込むと、契約内容が複雑化し、理解が難しくなる可能性がある。
  2. 柔軟性の低下
    • 個々の契約の目的や内容が異なるため、一つの文書にまとめることで、各契約の柔軟性が損なわれる可能性がある。

 

 

7.実務上のポイント

7.1契約内容の見直しと更新

 スタートアップ企業やベンチャー企業は、成長に伴い契約内容を見直し、必要に応じて更新することが重要です。特に以下のポイントに注意が必要です。

  1. 定期的なレビュー
    • 定期的に契約内容を見直し、企業の現状や市場環境に適した内容に更新する。
  2. 専門家の助言
    • 弁護士や行政書士などの専門家の助言を受け、契約内容の適法性や有効性を確認する。
  3. 株主の意見反映
    • 株主の意見や要望を反映させることで、全ての関係者が納得できる契約内容を維持する。

 

7.2トラブルの未然防止

 トラブルを未然に防ぐためには、契約書の作成時に以下の点を重視することが重要です。

  1. 明確な条項設定
    • 全ての条項を具体的かつ明確に記載し、解釈の余地を残さない。
  2. リスクの分担
    • 企業と投資家、株主間でリスクを適切に分担し、互いの利益を保護する。
  3. 適切な履行監視
    • 契約内容の履行状況を定期的に監視し、問題が発生した場合には迅速に対応する。

 

8.専門家の視点

フラット法務事務所からのコメント
 投資契約書と株主間契約書は、それぞれの役割を理解した上で作成することが重要です。特にスタートアップ企業では、資金調達とガバナンスの両面からアプローチする必要があります。初期段階での適切な契約書の整備は、企業の将来的な成長に大きな影響を与えます。
 投資家にとって、投資契約書はリスク管理のための重要なツールです。しかし、それ以上に株主間契約書が適切に整備されているかどうかも投資判断の重要な要素です。株主間の関係が良好である企業は、成長が期待できると考えます。

 

 

9.まとめ

 投資契約書と株主間契約書は、スタートアップ企業やベンチャー企業にとって重要な法的文書です。これらの契約書を適切に整備することで、企業は資金調達を円滑に進め、株主間の関係を良好に保つことができます。企業は成長段階や状況に応じて、これらの契約書を見直し、必要に応じて更新することが求められます。また、専門家の助言を受けながら、リスク管理と透明性の確保に努めることが重要です。

 企業の成長と成功を支えるためには、投資契約書と株主間契約書の両方を適切に活用し、全ての関係者が信頼し合える関係を築くことが不可欠です。これにより、企業は持続的な成長を遂げ、成功への道を切り開くことができるでしょう。

 

 

*記事内の事例(ケース)については、行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。

 

 

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