コラム

OEM契約書作成時の注意点!失敗しないために押さえておくべきポイント

 OEM(Original Equipment Manufacturer)契約は、製品を他社が設計・開発し、そのブランドで製造・販売する際に結ばれる契約です。この契約により、企業は自社製品の生産を効率化し、コスト削減や市場拡大を図ることができます。しかし、OEM契約には複雑な法的リスクが伴うため、契約書を作成する際には注意が必要です。本記事では、OEM契約書を作成する際の具体的な注意点を事例を交えながら解説します。

 

 

1.OEM契約書の基本的な構成

 OEM契約書は、双方の権利義務関係を明確にするための文書です。典型的な構成要素は以下の通りとなります。

1.契約当事者の特定

 契約を結ぶ双方(OEMメーカーと依頼企業)の名称、所在地、代表者名などを明記します。

2.契約の目的

 OEM契約の具体的な目的や範囲を明示します。どの製品をどのように製造し、どの市場に向けて販売するのかを具体的に記載します。

3.製品仕様・品質基準

 製造する製品の詳細な仕様や品質基準を明示します。この項目では、具体的な品質検査方法や不良品が発生した際の対応策も含めることが重要です。

4.知的財産権の取り扱い

 製品の設計や技術に関連する知的財産権の帰属を明記します。依頼企業が保有する権利、OEMメーカーが開発した技術の使用範囲を明確にする必要があります。

5.製造スケジュール・納期

 製造工程のスケジュールや最終納期を詳細に規定します。納期遅延に伴うペナルティや、遅延時の対応策も取り決めておきます。

6.価格・支払い条件

 製品の価格、支払いのタイミング、方法を明示します。また、コスト変更が必要になった場合の取り決めも含めると良いでしょう。

7.検査・検収条件

 製品が納品された後、どのように検査されるかを定めます。不良品が発見された場合の対応や、返品・再製造の条件も含めて規定します。

8.契約期間と更新条件

 契約の有効期間と、更新の方法や条件を記載します。契約期間が終了した後にどのような手続きを踏むかを明示しておくと、継続的な関係がスムーズに進行します。

9.契約解除の条件

 双方の合意に基づく契約解除の条件や、一方的に契約を解除する際の手続きについても明記します。違約金や、解除後の対応に関する詳細も含めることが重要です。

10.秘密保持義務

 契約に関わる機密情報や技術情報を第三者に漏らさないよう、双方の秘密保持義務を規定します。

11.紛争解決条項

 契約に関連する紛争が発生した際の解決手段(裁判、仲裁など)や、どの国の法律を適用するかを明記します。

 

2. 契約範囲の明確化

 OEM契約では、製品の設計、開発、製造、品質管理、販売に至るまで、どの範囲がOEMメーカーと依頼企業の責任となるのかを明確に定めることが重要です。この点を曖昧にすると、後々トラブルが発生する可能性があります。

事例: ある企業AがOEMメーカーBと契約を結んだ際、製品の品質管理の責任範囲が明確でなかったため、製品に欠陥が見つかった際に責任の所在が不明確となり、A社が大きな損害を被りました。このような事態を避けるためにも、契約書には各工程での責任範囲を明示することが必要です。

 

3. 品質基準の明確化

 OEM契約では、製品の品質が求められる基準を厳密に規定しておくことが必要です。具体的な品質基準が契約書に記載されていないと、OEMメーカーが低品質の製品を納品するリスクが高まります。

事例: 企業CはOEMメーカーDに新製品を発注しましたが、品質基準に関する詳細な取り決めが契約書に含まれていなかったため、最終的にF社から納品された製品はC社の品質要求を満たさないものでした。この結果、C社は顧客からのクレームが続出し、大きな損害を被ることになりました。

 契約書には、品質基準を数値や規格で具体的に記載し、不適合品に対する対応や再製造の条件なども取り決めておくことが大切です。

 

4. 知的財産権の取り扱い

 OEM契約では、製品のデザインや技術に関する知的財産権の取り扱いを明確にしておくことが必須です。どちらがその権利を保持するのか、またその権利をどのように利用するのかを契約書に明記しなければ、後に重大な法的紛争を引き起こすリスクがあります。

事例: 企業EはOEMメーカーFに製品を依頼しましたが、契約書に知的財産権の取り扱いが十分に明示されていなかったため、F社が同様の製品を他社にも提供してしまいました。結果、E社の競争力が低下し、ビジネスに悪影響を及ぼしました。これを防ぐためには、契約時に知的財産権の帰属や第三者への使用許諾の禁止を明確に規定することが重要です。

 

5. 製造スケジュールの明示

 OEM契約において、納期や製造スケジュールはビジネスの成功に直結する重要な要素です。製造スケジュールや納期に関する取り決めを曖昧にしてしまうと、供給遅延によるビジネスの機会損失を招くことがあります。

事例: 企業GがOEMメーカーHと契約した際、納期に関する取り決めが曖昧であったため、H社が納品を遅延させ、G社は市場での販売機会を逃しました。結果、競合他社が市場に先行して製品を投入し、G社は大きな売上機会を失いました。

 このような事態を防ぐため、契約書には製造スケジュールや納品期限を明確に規定し、納期遅延に対するペナルティや遅延時の対応策も取り決めておくことが重要です。

 

6. 契約解除とその条件

 OEM契約が途中で解除される場合、その条件や対応を明確にしておくことも重要です。契約解除に関する規定がない場合、一方的な解除やその後の対応で問題が生じることがあります。

事例: 企業IはOEMメーカーJと契約を結んでいましたが、J社が経営難に陥り、製造が困難になったため、契約を解除する必要がありました。しかし、契約解除に関する規定が不十分であったため、J社から高額な違約金を請求され、I社は大きな財務負担を強いられました。

 契約書には契約解除の条件や違約金、解除後の在庫処理や知的財産の扱いなど、詳細に規定しておくことが必要です。

 

7. 代替製造やサプライチェーンの確保

 OEM契約に依存しすぎることはビジネスリスクを高める可能性があります。万が一、OEMメーカーが契約履行できなくなった場合に備え、代替製造の手段やサプライチェーンを確保しておくことが重要です。

事例: 企業KはOEMメーカーLに製品製造を委託していましたが、L社が突如倒産し、K社は他の製造業者を確保できなかったため、一時的に生産が停止しました。これにより、K社は大きな損害を被り、市場での信頼も失う結果となりました。

 契約書に、OEMメーカーが契約履行できない場合の対応策や代替製造先の確保に関する取り決めを盛り込んでおくことが、リスク軽減につながります。

 

8.まとめ

 OEM契約は、自社ブランド製品の生産や販売を円滑に進めるために有効な手段ですが、法的リスクも多く伴いますので適切な契約書の作成が不可欠です。OEM契約書の作成には、責任範囲の明確化、知的財産権の取り扱い、品質基準、製造スケジュール、契約解除条件、代替製造手段の確保といったポイントをしっかり押さえることで、トラブルやリスクを未然に防ぐことができます。リスクを最小限に抑え、円滑なビジネス運営を実現しましょう。

 

 

*記事内の事例(ケース)については、行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。

 

 

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