コラム

借用書の書き方ガイド:安心できる契約書を作成するために

 借用書は、金銭の貸し借りが発生する際に、その内容を文書として記録し、後日のトラブルを防ぐために作成される重要な書類です。借用書を適切に作成することで、貸主・借主の双方が安心して取引を行える環境を整えることができます。借用書の作成方法やその重要性について十分に理解できるように本記事では、借用書の基本的な書き方と注意点について、実際の事例や専門家としてのコメントを交えながら解説していきます。

 

 

1. 借用書の基本構成とその重要性

 借用書は、以下のような基本構成で作成されることが一般的です。

  • タイトル:借用書のタイトルとして「借用書」「金銭借用書」などを記載します。
  • 借主・貸主の情報:借主と貸主の氏名、住所、連絡先などを明記します。
  • 借用金額:貸し借りする金額を具体的に記載します。
  • 返済期限:返済の期限を明確に記載します。また、分割払いの場合はその詳細も記載します。
  • 利息の有無:利息がある場合、その利率や計算方法を明記します。
  • 署名・捺印:借主と貸主の署名と捺印を行います。これにより、双方が内容に同意したことが証明されます。
  • 期限の利益の喪失条項:特定の状況において借主が返済期限を享受する権利(期限の利益)を失うことを定めます。

 これらの項目が明確に記載されていないと、後日、貸主と借主の間でトラブルが発生する可能性があります。たとえば、返済期限が明記されていないと、返済をめぐる争いが起きることがあります。また、利息に関する記載がない場合、貸主が利息を請求する権利が失われる可能性もあります。

 

2. 期限の利益の喪失とは

 「期限の利益の喪失」とは、借主が一定の条件を満たした場合に、事前に定めた返済期限を享受する権利を失い、直ちに全額返済を求められることを指します。一般的に、以下のような状況が発生した場合に適用されます。

  • 返済の遅延:借主が規定の返済日までに支払いを行わなかった場合。
  • 破産や差押え:借主が破産申請を行ったり、財産が差し押さえられた場合。
  • 信用の喪失:借主が他の債務についても返済を怠った場合や、信用が著しく低下した場合。

 この条項を借用書に明記しておくことで、貸主は借主が返済を怠った際に即座に法的措置を取ることができ、リスクを軽減することができます。

フラット法務事務所からのコメント
 期限の利益の喪失条項を設ける際は、その条件を明確に設定することが重要です。「返済が◯日以上遅れた場合」や「破産手続きが開始された場合」など、具体的な条件を記載することで、条項が有効に機能します。
 また、この条項は借主にとって厳しい条件であるため、借主が納得して署名・捺印することが不可欠です。合意がないまま条項を押し付けると、後日トラブルになる可能性がありますので、慎重に進めるべきです。
 さらに、期限の利益の喪失が発生した場合は、ただちに法的措置を講じる準備を整える必要があります。遅延なく行動することで、貸主が被る損害を最小限に抑えることができます。

 

3. 実際の事例:借用書が役立ったケース

ケース1: 友人間での金銭貸借

 ある日、Aさんは友人のBさんに急な出費が発生し、10万円を貸してほしいと頼まれました。Aさんは友人との信頼関係があるため、借用書を作成することなくお金を貸してしまいました。しかし、返済期限が過ぎてもBさんは返済せず、連絡も取れなくなってしまいました。Aさんは口約束だけでは証拠がなく、法的な手続きを進めることができませんでした。

 このケースで、もしAさんが借用書を作成していれば、返済期限や利息の有無について明確な証拠を持っているため、法的手続きをスムーズに進めることができたでしょう。

ケース2: 企業間の資金融資

 中小企業のC社は、新しいプロジェクトの資金調達のためにD社から1000万円を借りることになりました。両社は借用書を詳細に作成し、返済期限、利息、分割払いの詳細についてすべて記載しました。この借用書のおかげで、プロジェクトが順調に進み、返済も予定通り行われ、両社の関係は良好なまま維持されました。

 このケースは、借用書が企業間の信頼を築くための重要なツールであることを示しています。明確な借用書があることで、取引先との関係を強化し、ビジネスの成功を後押しすることができます。

ケース3: 個人間の金銭貸借

 Eさんは友人のFさんに50万円を貸しましたが、返済が滞ることを懸念し、借用書に「返済が3回遅れた場合、期限の利益を喪失し、全額を直ちに返済する」という条項を追加しました。結果として、Fさんが3回目の返済を遅延した際、Eさんはすぐに全額の返済を請求でき、トラブルを最小限に抑えることができました。

ケース4: 企業間の資金融資

 中小企業G社がH社に1000万円を貸し付ける際、借用書に「期限の利益の喪失」を盛り込んでいました。H社が資金繰りに苦しみ、他の債務に対しても返済が滞る状況が発生しましたが、この条項により、G社は直ちに全額返済を求めることができ、損失を最小限に抑えました。

 

4. 専門家としてのコメント:借用書の作成における注意点

1. 書面の形式

 借用書は、法律的に有効であるために一定の形式を守る必要があります。特に、署名や捺印は重要であり、これらが欠けていると借用書としての効力が失われる可能性があります。口約束だけでは、後日問題が発生した場合に証拠として認められないこともあります。

2. 金額や期限の明確化

 借用金額や返済期限を曖昧に記載することは避けましょう。具体的な日付や金額を記載することで、トラブルを未然に防ぐことができます。また、返済が遅れた場合のペナルティーや、利息の計算方法についても詳細に記載することが重要です。

3. 証人や連帯保証人の署名

 特に、多額の金銭が関わる場合は、第三者の証人を立てるとか連帯保証人を付ける等の対応も重要です。その署名を借用書に加えることで、さらに信頼性を高めることができますし、後日トラブルが発生した際に、借用書の内容が事実であることを証明しやすくなります。

5. 借用書の作成後の管理方法

 借用書を作成した後は、その管理にも注意が必要です。借用書を紛失してしまうと、せっかく作成した書類が無効になってしまう可能性があります。以下の方法で、借用書を安全に保管しましょう。

  • 原本の保管:借主と貸主がそれぞれ原本を1部ずつ保管することが望ましいです。紛失した場合でも、もう一方が原本を持っていることで、トラブルを避けることができます。
  • コピーの作成:借用書のコピーを作成し、別の場所に保管しておくことも有効です。デジタル化してクラウドに保管することで、紛失リスクをさらに軽減することができます。
  • 専門家への相談:借用書の内容が複雑な場合や、高額な金銭が関わる場合は、専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。行政書士や弁護士に依頼することで、法的に有効な借用書を作成できるでしょう。

 

6. 借用書の重要性を再確認

 借用書の作成は、金銭の貸し借りにおいて欠かせないステップです。適切な借用書を作成することで、貸主と借主の双方が安心して取引を行える環境を整えることができます。また、トラブルが発生した場合でも、法的な手続きを円滑に進めるための重要な証拠となります。

 借用書の作成は、単なる形式的な手続きではなく、信頼関係を保つための重要な手段です。友人間、家族間、企業間など、あらゆる場面で借用書を作成することを心がけましょう。そして、必要に応じて専門家の助けを借りながら、確実にトラブルを避けるための借用書を作成していきましょう。

 

7.まとめ

 本記事では、借用書の基本的な書き方やその重要性について解説しました。借用書を作成することで、金銭の貸し借りにおいて安心感を得ることができます。また、実際の事例やコメントを参考にしながら、適切な借用書を作成するためのポイントを押さえておくことが大切です。

金銭の貸し借りは、時にトラブルの原因となり得ますが、借用書を作成することで、そのリスクを大幅に減らすことができます。安心して契約を行い、良好な関係を築くためにも、借用書の重要性を再確認し、しっかりと準備を進めましょう。

 

*記事内の事例(ケース)については、行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。

 

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