コラム

インフルエンサー契約書作成ポイントは?企業と双方の利益を守る

 インフルエンサー・マーケティングは、SNSの普及に伴い、企業にとって欠かせないマーケティング手法の一つとなりました。消費者に親近感を与えるインフルエンサーを通じて商品やサービスを紹介することで、信頼性や影響力を効果的に活用できます。しかし、こうしたパートナーシップを成功させるためには、法的な側面もしっかりと押さえておくことが重要です。インフルエンサー契約書をしっかりと作成することで、双方の利益を守り、トラブルを未然に防ぐことができます。

本記事では、インフルエンサー契約書の必須項目について詳しく解説し、多くの事例やコメントを交えて具体的な契約書作成のポイントを紹介します。

 

 

1.契約書に入れるべき基本項目

 インフルエンサー契約書を作成する際、基本的に押さえておくべき項目は以下のとおりです。これらの項目がしっかりと明記されていれば、トラブルを未然に防ぐことが可能になり、企業とインフルエンサー双方が満足できる可能性が高まります。

1.契約の目的

 インフルエンサーが行う活動の目的や、企業が得たい成果を明記します。たとえば、製品のPRやサービスの紹介、ブランディングの向上など、具体的な目標を設定することで、双方の期待を一致させることができます。

2.活動内容の詳細

 インフルエンサーが具体的にどのような方法で企業のプロモーションを行うかを記載します。SNSプラットフォームの指定(例:Instagram、YouTube、TikTokなど)、投稿の回数、内容、動画・画像の形式など、細かく規定しておくことが重要です。

3.報酬および支払い条件

 報酬額、支払い方法(振込、商品、サービス)、支払いのタイミングなどを明記します。特に、報酬の支払い条件や時期は契約の中心的な部分であり、これが曖昧だとトラブルの原因になります。

4.投稿内容の承認プロセス

 企業側がインフルエンサーの投稿内容を事前に承認する場合、そのプロセスを明確に規定します。企業のイメージに沿わない投稿を防ぐために、承認や修正の権利が記載されているか確認しましょう。

5.投稿の公開スケジュール

 キャンペーン期間中にインフルエンサーがどのタイミングで投稿するのか、そのスケジュールを設定します。複数回の投稿が求められる場合は、それぞれの投稿日も記載しておくとスムーズです。

6.競業避止義務

 インフルエンサーが競合他社の商品やサービスを同時期に宣伝しないよう、競業避止義務を設けることが望ましいです。特に特定のキャンペーンやプロモーションにおいては、競合の影響を排除するためにこの項目は重要です。

7.著作権および肖像権の取り扱い

 インフルエンサーが作成したコンテンツに関する権利の帰属を明確にします。企業がそのコンテンツをどの範囲で使用できるのか、またその使用期限についても規定しておくことで、二次利用に関するトラブルを回避できます。

8.契約期間と更新条件

 契約が有効となる期間や、その期間が終了した後の契約更新に関する条件を明記します。契約が無期限になるのを避けるためにも、期間を明確に設定することが重要です。

9.契約の解除条件

 契約の解除に関する条件や手続きを明記します。特に、契約解除の通知期間や解除事由(例:契約違反、インフルエンサーの不正行為など)を具体的に記載することで、問題が生じた際の対応がスムーズになります。

10.守秘義務

 契約の中で知り得た企業の情報や戦略を、インフルエンサーが外部に漏らさないよう守秘義務条項を盛り込むことも重要です。これにより、ブランドのイメージや戦略が保護されます。

 これらの基本項目を押さえたうえで、次に具体的なケーススタディやトラブル事例を交えて、インフルエンサー契約書の作成における実践的なポイントを紹介していきます。

 

2. 契約の目的と範囲の明確化

 まず、インフルエンサー契約書には契約の目的を明確にすることが必要です。たとえば、企業がインフルエンサーにどのような形で商品やサービスを紹介してほしいのか、具体的な目標を定めます。これにより、双方の認識のズレを防ぎ、どのような投稿が求められているのかが明確になります。

 

事例: 化粧品ブランドA社のインフルエンサー契約
 ある化粧品ブランドA社が、インフルエンサーに自社の商品をインスタグラムで紹介してもらう契約を結びました。契約書には、インフルエンサーが投稿する回数や使用するハッシュタグ、また投稿内容において「使用感をポジティブに表現すること」など、具体的な目的が記載されていました。しかし、インフルエンサーはこの「ポジティブに表現する」という要件が「ステルスマーケティング」にあたるのではないかと懸念し、双方で追加の調整が行われました。結果として、契約書には「事実に基づいた誠実なレビューを行う」という文言が加えられ、トラブルを回避できました。

 

ポイント

 契約書には、インフルエンサーに求める具体的な活動内容(例:投稿回数、SNSプラットフォーム、ハッシュタグの使用、動画や画像の作成方法など)を明確に記載しましょう。また、企業のブランドイメージに合致した内容かどうかも明示することが重要です。

 

3. 報酬・支払い条件の設定

 インフルエンサー契約書には、報酬の金額や支払いのタイミング、形態も必ず記載しましょう。企業とインフルエンサーの間で報酬に関するトラブルが多いのは、支払いが遅れたり、報酬の形態が不明確なまま契約を結んでしまう場合です。

 

事例: ファッションブランドB社とインフルエンサーの報酬トラブル
 ファッションブランドB社は、フォロワー数10万人を超えるインフルエンサーに自社の新作コレクションを紹介してもらう契約を結びました。契約書には、支払いが「キャンペーン終了後30日以内」と記載されていましたが、インフルエンサー側は「投稿後すぐに支払いがある」と思い込んでいました。最終的にインフルエンサー側がSNSで報酬未払いの主張を投稿し、ブランドの評判に悪影響を与える結果となりました。このような事例は、契約書で支払い条件を明確にしておくことで防げます。

 

ポイント

 契約書には、報酬金額だけでなく、支払い方法(例:銀行振込など)や報酬の形態(現金、商品、サービスなど)、支払い時期も明確に記載しましょう。また、キャンペーンが長期にわたる場合は、進捗に応じた分割払いの条件を設定することも有効です。

 

4. 投稿内容の承認プロセスと変更の権利

 企業がブランドイメージを守るため、インフルエンサーの投稿内容を事前に確認することもあります。契約書には、投稿内容の承認プロセスを明記し、必要に応じて変更を要求できる権利を含めておくことが大切です。

 

事例: 食品メーカーC社とインフルエンサーの投稿内容に関するトラブル
 食品メーカーC社は、あるインフルエンサーに新商品のプロモーションを依頼しました。契約書には、投稿内容の事前承認を求める項目が含まれていましたが、インフルエンサー側は時間の都合で事前に確認をせずに投稿してしまいました。結果として、投稿内容が企業のイメージと合わず、両者の間でトラブルが発生しました。この事例では、契約書に明確な承認プロセスが規定されていれば、問題を回避できたでしょう。

ポイント

 契約書に、企業が投稿内容を事前に確認する権利や、必要に応じて修正を求める権利を盛り込みましょう。事前の承認を義務化することで、インフルエンサーの自由な創作活動と企業のブランディングとのバランスを取ることができます。

 

5. 競業避止義務(ノンコンペティション)と独占期間

 企業は、インフルエンサーが自社の競合他社の商品を同時期に宣伝することを避けたいと考えるでしょう。そこで、競業避止義務や独占期間を契約書に盛り込むことが重要です。

 

事例: 健康食品ブランドD社の競業避止義務違反
 健康食品ブランドD社は、インフルエンサーに自社の製品を宣伝してもらう契約を結びましたが、数日後、同じインフルエンサーが競合他社の健康食品をSNSで宣伝してしまいました。契約書に競業避止義務が明記されていなかったため、企業側は法的手段に出ることができず、キャンペーンは不成功に終わりました。この事例から、競業避止義務の重要性が浮き彫りになります。

ポイント

 契約書には、競業避止義務や、キャンペーン期間中およびその後の一定期間にわたり競合製品を宣伝しない旨を明記しましょう。また、インフルエンサーが特定の企業に対して一定期間専属で活動する「独占期間」を設けることも有効です。

 

6. 著作権・肖像権の取り扱い

 インフルエンサーが作成したコンテンツに関する著作権や肖像権の取り扱いも、契約書で明確に規定する必要があります。企業がどの範囲でコンテンツを使用できるか、またその権利がどの期間有効なのかを明記することで、後々のトラブルを防ぎます。

 

事例: アパレルブランドE社のコンテンツ利用に関するトラブル
 アパレルブランドE社は、インフルエンサーが作成したコンテンツを自社の広告やウェブサイトで使用する契約を結びました。しかし、契約書に「使用期間」や「二次利用に関する権利」が明記されていなかったため、インフルエンサー側が使用料を追加で請求しました。双方の認識の違いによって生じたこのトラブルは、事前に詳細な取り決めを行っていれば回避できたでしょう。

ポイント

 インフルエンサーが作成したコンテンツの著作権は誰が保有するのか、また企業がどの範囲でそのコンテンツを使用できるかを明確に規定しましょう。さらに、使用期限や、追加利用時の報酬に関する取り決めも忘れずにすると良いでしょう。

 

7.まとめ

 インフルエンサー契約書は、企業とインフルエンサーの双方にとって重要なツールです。報酬や投稿内容、著作権などの項目を明確に定めることで、トラブルを未然に防ぎ、円滑なコラボレーションを実現できます。今回紹介した事例やポイントを参考に、契約書を適切に作成し、双方の利益を守りましょう。

 

*記事内の事例(ケース)については、行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。

 

 

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