コラム

覚書、念書、誓約書、合意書、契約書の適切な使用方法:契約法務専門家の行政書士が解説!

 ビジネスの現場では、さまざまな文書が交わされます。中でも「覚書」「念書」「誓約書」「合意書」「契約書」は頻繁に登場する用語ですが、それぞれの違いや使い方を正確に理解している人は少ないかもしれません。この記事では、契約法務の専門家である行政書士が、これらの文書の違いと適切な使用方法について、具体的な事例を交えながら詳しく解説します。

 

 

1.覚書(おぼえがき)

・定義と役割

 覚書とは、当事者間で合意した事項を簡潔にまとめた文書です。契約書の内容の補完としても使用されることが多く、後日のトラブルを避けるために合意内容を確認する目的で作成されます。

・適切な使用方法

 覚書は一時的な合意や、契約の一部を確認する際に使用されます。正式な契約書を作成する前に、お互いの理解を確認するための文書としても有効です。

・事例

 例えば、企業間の取引において、初期段階での基本合意を確認するために覚書が作成されることがあります。ある企業Aが企業Bに対して製品を供給することを検討している場合、価格や納期の基本合意を覚書として残しておくことで、後日詳細な契約書を作成する際の基礎資料とすることができます。また、この覚書は最終的な契約書の一部として添付されることもあります。

 

2.念書(ねんしょ)

・定義と役割

 念書は、特定の事柄についての約束や確認を記録する文書です。覚書と同様に法的拘束力は限定的ですが、一方当事者が他方当事者へ差し出すものとして当事者間の信頼関係を強化するために用いられます。誓約書と名称が違うだけで基本的な役割は同じと言えます。

・適切な使用方法

 特定の事項についての約束や確認を記録する際に使用されます。例えば、合意内容の一部を再確認したり、特定の行動を約束する場合に有効です。

・事例

 あるプロジェクトの進行中に、担当者Aが特定のタスクを期限内に完了することを約束する際に念書を作成します。これにより、他のチームメンバーに対してもAの責任を明確にし、プロジェクト全体の進行をスムーズにすることができます。また、プロジェクト終了後の正式な報告書や契約書の一部として念書が添付されることもあります。


3.誓約書(せいやくしょ)

・定義と役割

 誓約書は、特定の行動を行うことや、一定の義務を履行することを誓う文書です。違反した場合には法的な責任を負うことがあります。念書と名称が違うだけで基本的な役割は同じと言えます。

・適切な使用方法

 特定の義務や行動を確実に履行させるために使用されます。例えば、雇用契約における秘密保持誓約書や、退職時の競業避止誓約書などが該当します。

・事例

 企業Xの従業員が退職する際に、競業避止誓約書を提出することがあります。これにより、退職後一定期間は同業他社での就業を制限し、企業Xの事業秘密の流出を防止することができます。また、新入社員が入社時に秘密保持誓約書を提出することで、企業内の機密情報が外部に漏れないようにする措置が取られます。これらの誓約書は、雇用契約書の一部として保存されることが一般的です。

 

4.合意書(ごういしょ)

・定義と役割

 合意書は、当事者間で取り決めた合意事項を文書化したもので、契約書に比べて簡潔に記載されることが多いですが、法的拘束力を持ちます。契約書と同様に、合意内容を明確にし、双方が納得した上で署名することで効力を発揮します。

・適切な使用方法

 取引や業務の一部について合意を確認する場合や、変更事項を正式に記録する際に使用されます。契約書全体の見直しを行う必要がない場合に、部分的な合意事項を文書化するために作成されます。

・事例

 企業Aと企業Bが既存の契約に基づく取引条件を変更する際、新たな契約書を作成するのではなく、変更部分のみを記載した合意書を作成します。これにより、迅速に変更事項を確認し、法的な効力を持たせることができます。合意書は、元の契約書の一部として添付され、全体の契約内容を補完する形で使用されることもあります。

 

5.契約書(けいやくしょ)

・定義と役割

 契約書は、当事者間の権利義務関係を明確に定めた文書です。法的拘束力があり、契約違反があった場合には法的な手続きが行われます。

・適切な使用方法

 取引や業務委託など、法的拘束力のある合意を明確にする際に使用されます。契約書には、当事者の名称、契約内容、期間、対価、違反時の措置などが詳細に記載されます。

・事例

 企業Yが企業Zに対してシステム開発を委託する場合、詳細な契約書を作成します。この契約書には、開発内容、納期、報酬、違反時の措置などが明記され、双方が署名・押印することで法的効力を持ちます。万が一、納期が遅れたり、開発内容に不備があった場合、契約書に基づいて適切な対応が取られることになります。また、契約書の補足として、覚書や念書、誓約書、合意書が添付されることもあり、これにより契約内容がさらに明確になります。

 

6.フラット法務事務所からのコメント

 契約書は、ビジネスの基本となる文書です。細部にわたる取り決めを明確にし、双方が納得した上で署名することで、安心して取引を進めることができます。特に、金額の大きい取引や長期のプロジェクトでは、契約書の内容を慎重に検討することが重要です。

 その契約書の一部を構成したり、内容の補完したりするために覚書や念書、誓約書、合意書が添付されることもあり、これにより契約内容がさらに明確になり、後々の誤解やトラブルを未然に防ぐことができます。また、契約全体を見直すことなく、迅速に合意や約束事を文書化できるため、実務上非常に有効です

 

7.まとめ

 覚書、念書、誓約書、合意書、契約書は、それぞれ異なる目的と法的拘束力を持つ文書です。これらを適切に使い分けることで、取引や契約におけるトラブルを未然に防ぐことができます。以下に、それぞれの文書の特徴は以下の通りです。

  • 覚書:基本的な合意を確認する文書。契約前のステップとして使用されたり、契約書の一部として使用されることもある。
  • 念書:特定の事柄についての約束や確認を記録する文書。信頼関係の強化に役立つ。契約書の一部として添付されることもある。
  • 誓約書:特定の行動を誓う文書。違反時には制裁がかされる場合もある。契約書や雇用契約書の一部として使用されることもある。
  • 合意書:取り決めた合意事項を文書化したもの。元の契約書の内容を変更することなく、変更事項や追加合意を迅速に記録するために有効。契約書の一部としても使用される。
  • 契約書:権利義務関係を明確に定めた文書。法的拘束力があり、取引の基本となる。補足として他の文書が添付されることが多い。

 契約法務の専門家である行政書士に相談することで、より確実な契約管理が可能となります。ビジネスにおいて、これらの文書を適切に活用し、トラブルのないスムーズな取引を実現しましょう。

この記事が読者の皆様にとって、ビジネスにおける重要な文書の理解と活用に役立つことを願っています。

 

*記事内の事例(ケース)については、行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。

 

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