コラム

契約不適合責任とは?免責の方法とその適用範囲について

 契約不適合責任とは、売買契約などで売主が買主に対して、契約内容に適合しない商品やサービスを提供した場合に負う責任のことです。この責任は日本の民法で定められており、特に2020年4月の民法改正後、契約不適合責任に関する規定が明確化されました。この記事では、契約不適合責任の基本的な概念、免責の方法、その適用範囲について解説し、実際の事例やコメントを交えて記述します。

 

 

1.契約不適合責任の基本概念

 契約不適合責任は、旧来の「瑕疵担保責任」に代わる概念として導入されました。具体的には、契約の内容に適合しない物やサービスが提供された場合、買主は以下のような対応を求めることができます。

  1. 履行の追完:契約内容に適合するように修理や交換を求めることができます。
  2. 代金の減額:提供された商品やサービスの価値が低いと判断できる場合、その差額を減額することができます。
  3. 損害賠償:契約不適合によって生じた損害について、賠償を請求することができます。
  4. 契約の解除:重大な不適合がある場合、契約そのものを解除することができます。

 

2.契約不適合責任の事例

事例1:中古車の売買契約

 ある中古車販売店で車を購入したAさん。しかし、購入後すぐにエンジンに不具合が見つかり、修理が必要となりました。販売店に相談したところ、販売店は契約不適合責任に基づき、エンジンの無償修理を行いました。このケースでは、契約内容(正常に動作する車)に適合しない商品が提供されたため、販売店が責任を負う形となりました。

事例2:新築住宅の購入

 Bさんは新築住宅を購入しましたが、入居後すぐに屋根からの雨漏りが発生しました。この場合、住宅販売会社は契約不適合責任に基づき、修理や補償を行う義務があります。Bさんは屋根の修理を求め、修理が完了するまでの間の仮住まい費用も損害賠償として請求しました。

 

3.免責の方法

 契約不適合責任を免責するためには、契約書に免責条項を明記することが一般的です。しかし、免責条項があっても全てのケースで免責が認められるわけではありません。以下の条件を満たすことが求められます。

  1. 具体的かつ明確な記載:免責条項は具体的かつ明確に記載されている必要があります。曖昧な表現では無効とされる可能性があります。
  2. 合理性:免責条項が合理的であること。例えば、消費者保護の観点から、消費者に一方的に不利な免責条項は無効とされることがあります。
  3. 事前の説明:売主は免責条項について買主に事前に十分な説明を行う必要があります。説明が不十分な場合、免責条項は無効とされることがあります。

 

4.免責条項の一般的な例

 以下は、ある不動産売買契約における免責条項の一例です。この条項では、隠れた瑕疵に関する責任を免除することを明確にしていますが、売主の故意や重大な過失がある場合は免責されないことを明示しています。

条項の例
 売主は、本物件の現状有姿(現在の状態)での売買を行うものであり、本物件の隠れた瑕疵については一切の責任を負わないものとする。ただし、売主が故意または重大な過失により隠れた瑕疵を知りながらこれを告知しなかった場合、この限りではない。

 

5.免責の適用範囲

 免責条項が有効となるためには、以下のような適用範囲の条件を理解しておくことが重要です。

  1. 契約書に明記されていること:免責条項は契約書に明記されている必要があります。口頭での合意では法的に認められにくいです。
  2. 消費者契約法の適用外:消費者契約法に基づく場合、消費者保護のために一部の免責条項は無効とされることがあります。特に、消費者に著しく不利な免責条項は無効となることが多いです。
  3. 故意または重過失の除外:売主の故意または重過失による契約不適合については、一般的に免責されません。これは、売主が意図的に不適合な商品やサービスを提供した場合、責任を免れることは許されないからです。

 

6.不動産業者が売主の場合

 不動産業者が売主となる場合、契約不適合責任の適用範囲や免責条項の設定には特別な注意が必要です。不動産業者はプロフェッショナルとしての責任を負うため、一般的な個人売主よりも厳しい基準が宅建業法により適用されます。

事例3:不動産業者からのマンション購入

 Cさんは不動産業者から新築マンションを購入しました。入居後、壁に亀裂が見つかり、調査の結果、建物全体に構造上の問題があることが判明しました。この場合、不動産業者はプロである宅建業者としての責任を負うため、契約不適合責任に基づき、修理や補償を行う義務があります。Cさんは修理の完了とともに、一時的な居住費用も請求しました。

 不動産業者が売主の場合、免責条項を設けることは宅建業法により基本的(2年間を過ぎるまで)にはできません。また、消費者契約法に基づく制限も適用されるため、消費者に一方的に不利な免責条項は無効とされることがあります。

 

7.請負契約書の場合

 請負契約書においても、契約不適合責任は重要な要素となります。特に建設工事などの請負契約では、施工された建物や設備が契約内容に適合しない場合、請負業者はその責任を負います。

事例4:建設工事の請負契約

 Dさんは建設会社と自宅の新築工事の請負契約を結びました。しかし、完成した家には多数の不具合があり、特に基礎部分に重大な欠陥が見つかりました。この場合、建設会社は契約不適合責任に基づき、基礎の修理を行う義務があります。Dさんは修理の完了を求めるとともに、遅延による損害賠償も請求しました。

 請負契約においても、免責条項を設けることは可能ですが、その有効性には限界があります。例えば、施工業者が故意や重大な過失によって不適合な施工を行った場合、免責条項は無効となります。また、公共工事などでは特別な規定が適用されることがあります。

 

8.まとめ

 契約不適合責任とは、契約内容に適合しない商品やサービスを提供した場合に生じる責任であり、その免責には明確な条項と合理的な理由が必要です。不動産業者が売主の場合や請負契約書においても、特別な注意が求められます。実際の事例を交えることで、その適用範囲や免責方法を具体的に理解することができます。

 契約不適合責任の免責条項を設ける際には、契約内容を明確にし、双方の合意を得ることが重要です。また、消費者保護の観点から、不利な条件を一方的に押し付けることは避けるべきです。不動産業者や請負契約の場合、特に宅建業法によってプロフェッショナルとしての責任が問われるため、慎重な対応が求められます。」

 契約不適合責任の理解と適切な免責条項の設定は、トラブル回避に役立ちます。法的な助言が必要な場合は、専門家に相談することをお勧めします。

 

*記事内の事例(ケース)については、行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。

 

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