コラム

取締役会の設置義務を知っていますか? 企業法務のポイントと対応策

 企業経営において、「取締役会」の設置は非常に重要な要素の一つです。特に、企業法務の観点から取締役会の設置義務について理解しておくことは、法的トラブルを回避するためにも欠かせません。本記事では、取締役会の設置義務について詳しく解説し、具体的な事例やコメントを交えながら、企業が取るべき対応策について考察していきます。

 

 

1.取締役会とは?

 取締役会とは、会社の経営方針や重要事項を決定するために設置される機関です。取締役会は、複数の取締役で構成され、会社の最高意思決定機関として機能します。具体的には、経営戦略の策定や重要な契約の承認、業務執行の監督などが取締役会の主な役割です。

 

2.取締役会の設置義務

 日本の会社法では、取締役会の設置義務は会社の種類や規模によって異なります。具体的には、以下のような場合に取締役会の設置が義務付けられています。

  1. 公開会社:公開会社とは、株式を市場で取引できる会社のことです。公開会社は、取締役会の設置が義務付けられています。
  2. 監査役設置会社:監査役設置会社では、取締役会の設置が義務付けられています。監査役は、会社の業務や会計を監査する役割を持つため、取締役会の設置が必要とされます。
  3. 委員会設置会社:指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社など、特定の委員会を設置する会社は、取締役会の設置が義務付けられています。

 

3.取締役会設置義務の背景とその重要性

 取締役会の設置義務は、企業の健全な経営とガバナンスの確保を目的としています。取締役会が設置されることで、以下のようなメリットがあります。

  1. 意思決定の透明性:取締役会を通じて、経営方針や重要な決定が複数の取締役によって議論され、透明性の高い意思決定が行われます。
  2. リスク管理:取締役会は、企業のリスクを管理し、適切な対応策を講じるための重要な役割を果たします。特に、経営陣の暴走を防ぐためのチェック機能が働きます。
  3. 法令遵守:取締役会を設置することで、会社法やその他の関連法令を遵守するための体制が整います。

 

4.取締役会と株主総会の違い

 取締役会と株主総会は、企業における重要な意思決定機関ですが、それぞれの役割や権限には大きな違いがあります。

4.1取締役会

 取締役会は、会社の業務執行に関する意思決定を行う機関です。取締役会のメンバーは取締役で構成され、日々の経営方針や具体的な業務の執行を決定します。取締役会は、経営のプロフェッショナルが集まり、専門的な知識と経験を活かして企業の運営をサポートします。

4.2株主総会

 一方、株主総会は、会社の所有者である株主が集まり、会社の基本方針や重要事項を決定する最高意思決定機関です。株主総会では、以下のような事項が議決されます。

  1. 取締役や監査役の選任・解任:株主総会では、取締役や監査役の選任や解任が行われます。これにより、会社の経営陣を直接監督することができます。
  2. 定款の変更:定款は、会社の基本的なルールを定めたものであり、その変更には株主総会の決議が必要です。
  3. 重要な経営事項:合併や会社分割、株式の発行・消却など、会社の存続や組織に関わる重要な事項は、株主総会で決定されます。

 取締役会と株主総会の違いを理解することで、企業のガバナンス体制をより効果的に構築することができます。

 

5.取締役会における取締役の人数

 会社法では、取締役会の構成についても規定があります。取締役会を設置する場合、取締役は少なくとも3名以上が必要です。これは、取締役会が複数の取締役によって意思決定が行われることで、透明性と公正性が確保されることを目的としています。取締役の人数が少なすぎると、意思決定が一部の取締役に偏るリスクが高まるため、このような規定が設けられています。

 

6.取締役会を設置すると発生する監査役の設置義務

 取締役会を設置する場合、監査役の設置も義務付けられています。監査役は、取締役の業務執行や会社の会計を監査する役割を持ち、企業のガバナンスと内部統制の強化に寄与します。具体的には、以下のような役割を果たします。

  1. 業務監査:取締役の業務執行が法令や定款に違反していないかを監査し、違反があった場合には是正を求めることができます。
  2. 会計監査:会社の会計処理や財務報告が適正に行われているかを監査し、不適正な処理があった場合には指摘します。

 監査役の設置により、取締役会の意思決定がより透明で公正なものとなり、企業の信頼性が向上します。

 

7.具体的な事例:取締役会設置の失敗と成功

 ここでは、取締役会の設置義務に関連する具体的な事例をいくつか紹介します。

7.1失敗事例:取締役会設置の遅れによる法的トラブル

 ある中小企業では、取締役会の設置義務を理解していなかったため、取締役会の設置が遅れました。その結果、重要な契約が取締役会の承認なしに進められ、後になって契約の無効を主張される事態に陥りました。このような法的トラブルは、取締役会の設置義務を遵守していれば回避できた可能性があります。

7.2成功事例:取締役会の設置によるガバナンス強化

 ある大企業では、早期に取締役会を設置し、定期的に取締役会を開催することで、経営の透明性とガバナンスを強化しました。特に、業績が低迷していた時期においても、取締役会を通じた迅速かつ適切な意思決定により、経営再建を成功させました。この事例は、取締役会の設置が企業の成長と安定に寄与することを示しています。

 

8.企業が取るべき対応策

 取締役会の設置義務を遵守するために、企業は以下のような対応策を取ることが重要です。

  1. 法令の確認と理解:まず、会社法をはじめとする関連法令を確認し、自社が取締役会の設置義務を負っているかどうかを理解することが重要です。
  2. 取締役会の設置:取締役会の設置が義務付けられている場合は、速やかに取締役会を設置し、取締役を選任します。取締役の選任は、株主総会で行われます。
  3. 定期的な取締役会の開催:取締役会は、定期的に開催することが求められます。少なくとも年に数回は開催し、重要事項を議論・決定することが必要です。
  4. 議事録の作成:取締役会の議事録を作成し、議論内容や決定事項を記録・保存します。議事録は、法的な証拠となるため、正確かつ詳細に作成することが重要です。
  5. ガバナンス体制の整備:取締役会の設置に合わせて、ガバナンス体制を整備し、内部統制を強化します。内部監査やリスク管理の体制を整えることで、企業の健全な経営が促進されます。

 

9.フラット法務事務所からのコメント

 取締役会の設置義務は、企業の規模や業態によって異なりますが、取締役会を設置することは企業のガバナンスを強化するために非常に有効です。特に、重要な意思決定が複数の取締役によって議論されることで、透明性と公正性が確保されます。

また、取締役会を設置することで、経営の意思決定が迅速かつ適切に行われるようになります。さらに、複数の取締役で設計されるためリスク管理が強化され、企業の持続的な成長も期待できます。特に中小企業においても、取締役会の設置は重要な経営戦略の一つと言えます。

 

10.まとめ

 取締役会の設置義務について理解し適切な対応策を取ることは、企業経営において非常に重要です。取締役会を設置することで、企業のガバナンスが強化され、法的トラブルを回避することができます。また、取締役会と株主総会の違いを理解することで、企業の運営がより効果的に行われます。企業は、自社の規模や業態に応じて取締役会の設置を検討し、必要な対応策を講じることが求められます。この記事が、取締役会の設置義務に関する理解を深める一助となれば幸いです。

 

*記事内の事例(ケース)については、行政書士法人フラット法務事務所で経験したものだけでなく想定ケースも含まれ、実際の事例とは異なることがあります。また、関係法令は記載した時点のものです。

 

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